研究概要 |
平成23年度では先行研究で確立した五島列島福江島、能登半島珠洲でのNO_y,全硝酸(TN)の自動連続観測の継続およびデータ解析を行なった。また、平成24年3月に行なわれる航空機観測においてガス状NO_y,ガス状硝酸の観測を行なった。航空機観測については年度末に実施し、解析等はこれからであるため、本概要では地上観測、その中でも福江と珠洲の結果について述べる。 まず、NO_y,TNの季節変動パターンについては、福江ではNO_yは冬・春季に極大、夏季に極小となり、TNについては春季に極大、夏季に極小となった。COについても似た季節変動を示すため、福江の窒素酸化物の季節変動は大陸からの長距離輸送による影響が強いと考えられる。一方、珠洲においてはNO_y,TNとも夏季に極小にならず、春季の高濃度が継続している結果となった。また、冬季である1月に極小となる季節変動となり、福江とは異なった季節変動パターンが得られた。珠洲の冬季で極小となるのは、現段階では確信は持てないが、冬季の北陸地方では降雪が多く、それによるTNの湿性沈着が影響している可能性が考えられる。これについては降雪量との関係を調べる等更なる検証が必要である。次に、珠洲において夏季に高濃度が継続することについて考察する。後方流跡線解析を用いて、気塊の由来別に季節変動パターンを算出したところ、辺戸や福江では中国・韓国由来の気塊が高濃度であったのに対し、珠洲では日本由来の気塊が高濃度であった。珠洲は日本海側に位置するため、夏季は太平洋から日本列島を通過した気塊が多く到達する。そのため、珠洲において夏季に高濃度が継続するのは日本由来の汚染が到達している影響が強いと考えられる。また、TN濃度が高いのは、夏季は太陽光強度が強く、光化学反応が進行しやすいことも要因として挙げられる。
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