研究概要 |
RalはRasファミリーに属する低分子量GTP結合タンパク質であり、細胞の増殖、生存、小胞輸送の制御など様々な機能を担っている。他のGタンパク質と同様に、RalはGTPの結合した活性型とGDPの結合した不活性型の2つのコンフォメーションをとり、その活性化、不活性化はそれぞれグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)、GTPase活性化タンパク質(GAP)により触媒される。Ralを不活性化する酵素、RalGAPは長らく未知であったが、申請者らはその分子同定に初めて成功し、約2,000アミノ酸からなる触媒サブユニットαと約1,500アミノ酸からなる調節サブユニットβからなる新規ヘテロ複合体であることを見いだした。本研究ではRalGAP複合体の構造、およびその活性調節メカニズムを原子分解能レベルで明らかにすることを目的とした。 本年度は、RalGAP複合体の構造決定に向けSf9昆虫細胞発現系を用いた全長RalGAP複合体の調製を試み、機能的な全長RalGAP複合体を精製することに成功した。さらに大量調製するための条件検討を行った。また、RalGAPα1、α2のGAPドメインの大腸菌発現系を構築し、GAP活性の測定を行った。 我々は転移性の膀胱癌など多くの癌で、RalGAPの発現が喪失しているこをを見出しており(Saito et al.,Oncogene,2012)、その構造機能解析は医学生物学的に極めて重要であると考えられる。
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