研究領域 | 細胞シグナリング複合体によるシグナル検知・伝達・応答の構造的基礎 |
研究課題/領域番号 |
23121506
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 雅 東京大学, 医科学研究所, 教授 (40134621)
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キーワード | 蛋白質リン酸化 / Tob蛋白質 / 増殖シグナル / DNA損傷 / X線結晶構造解析 / CCR4-NOT複合体 / CNOT3蛋白質 / 細胞周期 |
研究概要 |
リン酸化による蛋白質の修飾に注目した、Tobとその相互作用分子の会合状態の構造生物学的解析を以下のように進めた。 (1)全長Tob蛋白質は可溶化せず、C端側を十数アミノ酸欠失させたTob・Cは可溶化できた。MAPK依存的リン酸化Tobの構造解析のために、リン酸化模倣体Tob・C3SEと非リン酸化模倣体Tob・C3SAを作成した。十分量のこれら蛋白質を調製し、様々な条件で結晶化させようとしたができなかった。Pull-down実験では、Tob・C3SEもTob・C3SAも、in vitroで過剰量存在するとTobに会合できることが分かった。一方で非リン酸化TobとCNOT7とTri(dA)の3者の結晶構造を解いた。 (2)Tobはproteasomeのよい標的であり、不安定であるが、UV等によるDNA損傷に依存してリン酸化されて安定化する。関与するキナーゼを同定するために様々な阻害剤を用いてUV刺激してTobの安定化を調べた。その結果、CGK733がTobの安定化を阻害することを見出した。現在CGK733で阻害されるキナーゼ候補を絞り込んでいる。 (3)CCR4-NOT複合体の全体構造の解析を視野にいれ、複合体サブユニットすべてについて大腸菌、あるいは昆虫細胞を用いて大量に発現させることに成功した。CNOT2とCNOT3が全体構造の維持に重要であることを見出したのでCNOT2とCNOT3の会合を調べ、それらがそれぞれのC端側にあるNOT boxで会合することを見いだした。 (4)HeLa細胞の増殖を同調させ、細胞周期依存的にM期でCNOT3がリン酸化されることを見出した。予備実験からはcdc2キナーゼ/cyclinBが責任キナーゼであると考えられた。一方でX線結晶解析用に昆虫細胞系でCNOT3を大量発現させたが、結晶を得るには至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
結晶構造に向けた蛋白質の大量精製、精製蛋白質同士の会合、DNA損傷依存的なTobリン酸化の解析、非リン酸化TobのとCNOT7とpoly(A)模倣体Tri(dA)の3者複合体の結晶構造解明など、全体としておおむね順調に進展しているといえる。ただ、リン酸化模倣Tobや非リン酸化模倣Tobの構造解析と大量調製したCNOT3の構造解析が、結晶化条件を多々検討したにも関わらず結晶化に至らず、見かけ上やや遅れている感があるかもしれない。しかしどちらの場合も、会合蛋白質と共結晶を解く方向で準備が進んでおり、研究期間中に解決できると予測している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)上記のように、Tobリン酸化部位変異体やCNOT3は大量に蛋白質を精製しても結晶化しなかったので、それぞれ会合することが分かっている、CNOT7やCNOT2との共結晶構造を解く。またTobについては、C端側を約100アミノ酸欠失し、かつMAPKによるリン酸化部位を保持する蛋白質を調製することによっても結晶化条件を改善する。 (2)TobとPABPの共結晶構造解析を進める。 (3)CNOT3のリン酸化部位を決め、リン酸化模倣体や非リン酸化模倣体がCCR4-NOT複合体本体を標的mRNAにリクルートするかどうか、luc assayにより検討する。 (4)CCR4-NOT deadenylase複合体の活性モジュールを構造を解析する。
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