研究領域 | 細胞シグナリング複合体によるシグナル検知・伝達・応答の構造的基礎 |
研究課題/領域番号 |
23121509
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
植村 健 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (00372368)
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キーワード | 脳・神経 / シナプス形成 / 小脳 / 蛋白質複合体 |
研究概要 |
シナプス後部のGluRδ2がシナプス前部のNeurexinと分泌蛋白質Cbln1を介して結合することにより三者複合体を形成することで小脳シナプス形成を調節していることが明らかとなった。この分子複合体がどのようにシナプス形成のシグナルを伝えるかを解明するためにGluRδ2-Cbln1-Neurexin三者複合体の化学量論的解析を行った。HEK293T細胞にGluRδ2を発現させ、細胞膜画分を抽出しNative-PAGEにて解析した結果、GluRδ2は他のイオンチャネル型グルタミン酸受容体と同様に細胞膜上で4量体を形成していることが明らかになった。さらに、Cbln1との結合部位であるGluRδ2のN末端細胞外領域(N-terminal domain;NTD)はそれ自身で2量体を形成していることが明らかになった。GluRδ2-NTD-Cbln1複合体の化学量論的解析をゲルろ過クロマトグラフィーと等温滴定型熱量測定を用いて解析した結果、GluRδ2-NTDとCbln1は1:1の化学量論比の複合体を形成していた。また、同様にCbln1-Neurexin複合体の化学量論的解析を行った結果、Cbln1とNeurexinは1:2の化学量論比の複合体を形成していることが明らかになった。培養小脳顆粒細胞に抗体を用いて4量体化したGluRδ2-NTDを添加するとアクティブゾーン蛋白質Bassoonの集積が促進された。しかしながら、2量体のGluRδ2-NTDを添加した場合にはこの効果は認められなかった。これらの結果から、GluRδ2、Cbln1、Neurexinは1:2:4の化学量論比の複合体を形成し、GluRδ2はCbln1を介してNeurexinを4量体化することによりシナプス前部の分化誘導を引き起こすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GluRδ2-Cbln1-NRXN三者複合体の化学量論的解析及びシナプス結合制御機構の解析については当初の計画通りに進展しているが、Cbln1-NRXN複合体及びGluRδ2-Cbln1複合体の結晶化には至っておらず、さらなる条件検討が必要である為。
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今後の研究の推進方策 |
本年度調製した組換え蛋白質は全て精製の為にHis tagが付いており、今後His tagを取り除いた組換え蛋白質を調製することを予定している。さらに、結晶化に用いる組換え蛋白質についてはそれぞれの蛋白質について結合に必要な最小領域を同定し用いることを予定している。
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