シナプス形成は、脳神経回路網の発達において要のステップであり、正確な神経情報の情報伝達や脳の高次機能に極めて重要である。本研究では、小脳シナプス形成を担うグルタミン酸受容体GluRδ2ーCbln1ーNeurexin三者複合体の構造解析によって相互作用の特異性と機能制御のメカニズムを明らかにし、脳におけるシナプス形成機構の構造基盤に基づく厳密な理解と制御機構の基本原理を解明することを目的に、複合体の結晶構造解析を試みた。H23年度の研究で明らかとなった複合体の化学量論比のデータ(GluRδ2:Cbln1:Neurexin=1:2:4)を基に、GluRδ2-NTD (N-terminal domain)ーCbln1ーNeurexin1β-ECD(Extra cellular domain)三者複合体およびGluRδ2-NTDーCbln1、Cbln1ーNeurexin1β-ECD二者複合体を調整し、結晶化を試みた。Cbln1ーNeurexin1β-ECDについてはCbln1ーNeurexin1β-ECD二者複合体と期待される微小結晶を得ることができた。一方、GluRδ2-NTDおよびCbln1についてはそれぞれ単体の高分解能結晶が得られ、結晶構造を分解能2.8オングストロームおよび2.2オングストロームで決定することに成功した。小脳シナプス形成を担う受容体および分泌タンパク質の構造が明らかになり、引き続き受容体複合体の結晶構造を明らかにしていくことで、三次元構造に基づいた相互作用の特異性、構造変化による機能変換を解析していくことが可能になると期待される。
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