研究概要 |
SF-9昆虫細胞にCCR1を大量発現させた上で、膜画分を密度勾配遠心により精製した。CCR1をDDMで可溶化した上で、その直後にMSP1E3を使ってrHDL、に再構成した。得られたrHDLを、His-tagおよび1D4カラムで精製した。得られたCCR1の純度は80%以上、収量は40ugであった。 得られたCCR1-rHDLに対して、Gタンパク質とMIP-1αのmonomeric mutantであるP8A/F13Y/E67Qを添加した試料を用いて、GDP-GTP交換アッセイを行った。その結果、MIP-1α濃度依存的にCCR1-rHDLに対する蛍光標識GTP結合量が増大した。したがって、CCR1-rHDLがシグナル伝達活性を保持することが示された。さらに、MIP-1α変異体とCCR1-rHDLの相互作用をSPRで調べた結果、解離定数が約2uMと算出された。 次に、アミドプロトン検出型のTCS実験を行った。その結果、L3,A10,C11,C12,T16,F24,Y28,S32,Q34,I41,F42,S47,Q49,V50,C51にラジオ波照射に伴う有意な強度減少が観測された。本実験により得られたCCR1との結合界面と、CCR5との結合界面を比較すると、Q49の近傍は、両方の結合界面に含まれるのに対し、Q30を中心とした領域、およびV59を中心とした領域は、それぞれCCR1,CCR5との結合界面にのみ含まれていた。 MIP-1αについて、E57やV63のSNPsが報告されている。これらの残基は、今回の研究で、CCR5特異的な結合部位に存在することが分かった。これらのSNPsが多発性硬化症の症状に与える影響を調べることにより、CCR5とMIP-1αの相互作用が病気の進行に果たす役割について、手掛かりが得られると考えた。
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