公募研究
パスツレラ菌由来毒素(PMT)は標的細胞に結合し、細胞内に侵入して作用する皮膚壊死毒素である。本毒素は、1285個のアミノ酸残基からなり、レセプター結合ドメインと毒素活性ドメインを有する。パスツレラ毒素の毒素活性部分を有するC末端側の細胞内作用領域(C-PMT)の立体構造については、申請者らが既に解明した。本計画研究の具体的な項目は、PMTの活性ドメイン(C-PMT)とその細胞内標的分子であるヘテロ三量体GTPaseのαサブユニット(G2i)との複合体の立体構造解析によるシグナル伝達活性化メカニズムの構造生物学的理解である。活性本体を有するC末端側ドメインであるC-PMTとヘテロ三量体GTPaseのαサブユニットであるGi2との複合体の結晶化を行い、X線構造解析の手法を用いて、その立体構造を決定する。これによって、パスツレラ毒素によるシグナル伝達系を活性化する反応機構について詳細な知見が得られ、GTPase活性化機構の理解や新規なGTPase阻害薬の開発に関する研究基盤を提供するものと考えられる。C-PMT変異体並びにGi2については大腸菌での大量発現系を用いて、アフィニティクロマトで精製することができた。既に結晶構造を決定した変異体(3種類;C1159S,C1165S,C1159SC1165Sダブルミュータント)を用いて、この標的分子のGi2との複合体結晶、あるいはその認識部分の(20アミノ酸;IFRMVDVGGQRSERRKWIH並びにその類縁ペプチド)との複合体結晶を作成し、SPrin-8において回折データ測定を行った。その結果、PMT-C1165SとGTPaseの分子間の相互作用を決定し、その結合様式を観測することができた。
2: おおむね順調に進展している
CPMTの不活性型変異体として知られる、CPMT-C1165S及びCPMT-C1159S C1159S doublemutantとGα_<i2>の1次配列に依存的なペプチド残基を用いて複合体CPMT/ペプチド複合体の結晶構造解析を行った。その結果、PMTのGln1225及びArg1193残基、そしてGタンパク質の脱アミド化修飾を受けるGln残基のN末端側に存在する2つのGly残基、1つのVal残基が結合に関与している可能性が示唆された。
C-PMT並びにGi2については大腸菌での大量発現系を用いて、アフィニティクロマトで精製する。既にC-PMTとGi2との複合体結晶を、数種類の異なる沈殿剤の条件下で作成している。これらの結晶について、SPring-8などの放射光施設において回折データ測定を行う。活性本体を有するC末端側のC-PMTの立体構造とG2iの立体構造を基に、分子置換法でC-PMTとGi2の構造決定を行う。これによってC-PMTとヘテロ三量体GTPaseとの複合体の構造が確立され、その反応機構について詳細な知見が得られ、パスツレラ毒素全体が感染する際のメカニズムを解明できると期待される。C-PMT分子に関するシグナル伝達機構について詳細な知見が得られ、構造生物学的なアプローチから、パスツレラ毒素の感染メカニズムを解明し、それに関わる創薬への構造的基盤の構築が期待される。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (1件)
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