ボルト(vault)は3種類の蛋白質と1種類のRNAによって構成されており、分子量約1000万でサイズが約40nm×67nmという今日までに報告されている中では最大のRNA-蛋白質複合体である。本質的な機能は未だに明らかになっていないが、脂質ラフトに集まって自然免疫反応に関与する可能性が示されており、このことは我々が3.5#197;分解能で決定したボルト粒子外殻の立体構造から得られた情報とも一致している。したがって、本研究ではMVPのみで構成されるボルト粒子を2.8#197;分解能で構造決定することを目指すと同時に、コレステロール誘導体との複合体構造解析も合わせて行い、ボルトがどのようにして脂質ラフトを認識するのかを原子レベルで明らかにすることを目指した。我々が決定したボルトの構造では、ボルトのウェスト部位(MVPのN末端同士)の会合は非常に弱く、フレキシブルなため、この部分の電子密度が不明瞭でした。これが、ボルト結晶の分解能が向上しない原因であると考え、遺伝子工学的手法によりMVPのN末端にロイシンジッパーを導入し(LZ-ボルト)、粒子の安定化を図りました。その結果、従来比の15倍以上の収量(昆虫細胞1L培養あたり80mg)で非常に均一で安定した粒子を得る事が可能になりました。現在は、このLZ-ボルトを用いて結晶化条件の検索を行っています。
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