研究領域 | 細胞シグナリング複合体によるシグナル検知・伝達・応答の構造的基礎 |
研究課題/領域番号 |
23121518
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡田 雅人 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (10177058)
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キーワード | 構造生物学 / シグナル伝達 / 癌 / エンドソーム / 足場蛋白質 / MAPK経路 / mTOR経路 |
研究概要 |
細胞増殖において、増殖因子受容体の下流で活性化するMAPK経路およびmTORC1経路が主要な役割を担う。しかし、これらの経路は多様な細胞応答において機能することが知られ、それらの機能の選別機構はまだ明らかではない。我々は、後期エンドソームに局在する膜アダプター蛋白質p18を同定し、p18複合体が細胞増殖に必須であること、p18がMEK1特異的な足場蛋白p14-MP1を後期エンドソームにアンカーすること、さらに、mTORC1の活性化にも必須の役割を担うことなどを見いだした。これらのことから、細胞の増殖や成長シグナルがp18を介して制御されることが示唆されている。そこで本研究では、p18とp14-MP1の複合体、さらにmTORC1との複合体の分子構造を解明することによって、p18による増殖シグナル経路の選別機構の分子基盤を明らかにすることを目的とした解析を行なった。 これまでに、大腸菌での発現系を用いて、p14-MP複合体の大量発現系の構築および高度精製に成功した。これまで難容性であったp18も大量発現に成功し、新たな可溶化条件を見いだしてp18-p14-MP1複合体の再構成に一部成功した。p18の可溶化をより効率よく行うために、動物細胞系での発現系の構築に成功し、可溶化蛋白質および三者複合体の精製を進めている。また、p18の後期エンドソームに特異的局在する構造的基盤を解析し、特異性に決定に必須となるアミノ酸残基(リジン残基とオイシン残基)を決定した。また、それらの残基を認識する蛋白質の同定を進めている。さらに、p18欠損細胞を用いてp18-p14-MP1複合体の生理機能解析を行い、p18複合体が主にmTORC1経路を介して細胞増殖制御並びにリソソームの成熟過程において重要な役割を担うことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
p18複合体の構造解析の重要な段階であるp18の可溶化に若干手間取ったが、次年度には構造解析の段階に進める目処が立ちつつある。一方で、後期エンドソームにp18が特異的に局在化するメカニズムが明らかになり、生理機能解析に関しても一定の進展が見られている。
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今後の研究の推進方策 |
p18の可溶化が最大の問題点であったが、動物細胞での発現を利用することにより解決できる目処が立ってきている。今後は、既に調製に成功しているp14-MP1複合体との三者複合体の安定的な調製法を確立して、構造解析へと駒を進める予定である。
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