公募研究
本研究では、カルビンサイクル調節タンパク質CP12との複合体であるGADPH-CP12、GAPDH-CP12-PRK、ならびにPRKの立体構造をX線構造解析法によって決定し、これら複合体形成によるGAPDH、PRKの阻害メカニズム、すなわち、カルビンサイクル調節メカニズムを明らかにすること、ならびに、"Intrinsically Unstructured Protein"であるCP12の段階的折り畳みメカニズムを解明する予定である。平成23年度は、GAPDH-CP12複合体を中心にその結晶化とX線構造解析を行った。Synecococcus由来GAPDHとCP12をそれぞれ組み替え大腸菌で大量生産し、Niアフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーにより精製を行った。得られた高純度のGAPDHとCP12を用いて、GAPDH-CP12複合体の結晶化を行った。恒温インキュベータ(20℃と4℃)で、種々の結晶化条件の検討を行ったところ、PEG3350を沈殿剤として用いた条件で、0.2x0.2x0.1mm程度のX線回折実験に適した大きさの単結晶を作成することに成功した。大型放射光施設にてX線回折実験を行ったところ回折能2.2A分解能を示し、構造解析に成功した。GAPDH-CP12複合体の構造解析から、CP12のC末端部分(Thr53-Asp75)のみがGAPDHと結合して立体構造を形成し、その他の部分は特定の立体構造を持たないことが分かった。また、CP12はジスルフィド結合を有し、同時にNADとも結合していたことから、GAPDHとの結合にCP12の酸化とNADが必須である理由が明らかとなった。GAPDHの基質結合部位はCP12によってふさがれ、GAPDHは基質に結合できない状態にあったため、CP12によってGAPDH活性が阻害されるメカニズムが示された。
2: おおむね順調に進展している
通常、結晶化が困難とされるIntrinsically Unstructured Proteinを結晶化するにあたって、新たなタンパク質結晶化技術を適用し、GAPDH-CP12複合体の結晶を作製することができた。さらに、構造解析にも成功し、そのメカニズム解明に迫ることができ、計画どおりおおむね順調に研究が進展していると考えている。
今後は、今後、PRKの構造解析ならびに、さらなる複合体の構造解析に取り組むことによって、カルビンサイクル調節メカニズムを明らかにすること、ならびに、"Intrinsically Unstructured Protein"であるCP12の段階的折り畳みメカニズムを解明する予定である。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Structure
巻: 19 ページ: 1846-1854
DOI:10.1016/j.str.2011.08.016