研究領域 | 細胞シグナリング複合体によるシグナル検知・伝達・応答の構造的基礎 |
研究課題/領域番号 |
23121520
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
禾 晃和 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 准教授 (40379102)
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キーワード | シグナル伝達 / 受容体 / X線結晶構造解析 / 糖タンパク質 / 動物細胞発現系 / 構造生物学 |
研究概要 |
発生過程における神経軸索の伸長は、セマフォリンと呼ばれる細胞外シグナル分子とその受容体プレキシンによってガイドされる。セマフォリンは、軸索伸長のガイダンスにおいて忌避因子として働いており、プレキシンと結合することにより軸索の伸長を反発させる。研究代表者は、すでにセマフォリン6AとプレキシンA2のペアを取り上げ、それぞれ単独と複合体の状態でX線結晶構造を決定することに成功し、セマフォリンとプレキシンがシグナル伝達時に、2対2のヘテロ4量体を形成することを明らかにしている。本年度の研究では、プレキシン活性化の詳細な分子機構を明らかにするため、特に、プレキシン細胞外領域の構造解析に取り組んだ。上述のように、代表者はすでにセマフォリン6AとプレキシンA2の複合体構造を決定しているが、この解析では、非常に長いプレキシン細胞外領域のうち、アミノ末端に存在するセマドメインとPSIドメインの2つのみを含む断片を用いていた。しかしながら、プレキシンの細胞外領域にはさらに8つのドメインがあり、受容体活性化機構を解明するためには、これらを含めた全長領域の構造情報が必要である。そこで、本研究では、動物細胞発現系を用いて、プレキシン細胞外領域の様々な長さの断片を発現させ、安定な状態で発現される断片を探索した。その結果、細胞外領域全長の断片についても高発現が見られることが明らかになった。全長以外の短い断片についても、高発現が見られるものがあったので、それらのコンストラグト全てについて、安定発現株を作製した。樹立後の安定発現株は、高密度培養装置を用いて培養し、目的タンパク質の大量発現を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の重要課題であるプレキシン細胞外ドメイン全長の構造解析に向け、まず、その第一段階と言える発現系の構築に成功した。安定発現株を大量培養した結果、mg単位のタンパク質が得られることが分かり、結晶化を含め構造解析を行っていく上で、十分な量のタンパク質が確保出来た。
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今後の研究の推進方策 |
プレキシン細胞外領域の各種断片について、大量発現は完了しているので、今後は、それぞれについて精製系を確立し、順次、構造解析に取り組んで行く。全長断片を含め、長い断片については構造の柔軟性が高く、結晶化が困難な可能性もある。その場合は、電子顕微鏡解析やX線溶液散乱などを用いて、分子構造の外形を決定していく。また、本年度取り組むことが出来なかった、セマフォリンとプレキシンの選択的相互作用機構の解析については、セマフォリン6Dを発現させ、単独、複合体での結晶化に取り組んでいく予定である。いずれのタンパク質も糖タンパク質であるため、結晶化において糖鎖の影響が見られる場合、分解酵素を用いて糖鎖を除去購晶化を行う。
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