研究領域 | 細胞シグナリング複合体によるシグナル検知・伝達・応答の構造的基礎 |
研究課題/領域番号 |
23121522
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
伊東 広 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (10183005)
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キーワード | シグナル伝達 / Gタンパク質複合体 / ユビキチン化 |
研究概要 |
Gタンパク質シグナルは脳神経系、循環器系など数多くの生体調節システムにおいて働く重要な情報伝達系である。Gタンパク質共役受容体(GPCR)を標的とした薬剤が世界中で使用され、このシグナル伝達系の構成因子をターゲットとした新しい薬剤の開発が望まれている。本研究では、新たなGタンパク質シグナル複合体の同定、およびその複合体の構造と機能を明らかにして、創薬研究の基盤を築くことを目的としている。本年度、以下の成果が得られた。リガンド不明であるオーファンGPCRに属するGPR56,Latrophilin1,LGR5に対する抗体の作成を行った。マウスGPR56の細胞外ドメイン(ECD)を抗原としてラットに免疫して、いくつかのハイブリドーマを得ることに成功した。ウエスタンや免疫染色に使用可能の抗体が得られたが、GPR56の機能に影響を与える抗体は未だ得られていないので、さらなるハイブリドーマのスクリーニングを行っている。一方、ヒトGPR56に関してアゴニストのように受容体を活性化するモノクローナル抗体が2種類得られた。また抗体と受容体細胞外ドメインの複合体の構造解析を行うために必要な量を得るためハイブリドーマの培養条件や精製法を検討して、一つの抗体においてミリグラム単位での収量が実現した。Latrophilin1ECDに関して発現用バキュロウイルスが得ら精製条件の検討を、LGR5に関してLGR5ECDをマウスに免疫してELISAで陽性を示すクローンをいくつか得る段階にまで進んでいる。一方、Gタンパク質と相互作用してGタンパク質シグナルを制御するRic-8に関してRic-8AおよびRic-8Bを過剰発現、ノックダウンできるアデノウイルスの作成に成功し、神経前駆細胞の増殖、分化、遊走にRic-8A/Bが関与していることが明らかとなった。またGαsのユビキチン化を触媒するE3 ligaseの探索を250種類のRing fingerモチーフを持つ候補分子とAlphaScreenという高感度蛍光相互作用解析系を用いて行い30種類の候補分子を見出した。今後、新たな生理機能を持ったGタンパク質複合体が明らかになる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ予定通りに進んでおり、次年度のさらなる発展が期待されます。
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今後の研究の推進方策 |
E3 ligaseに特徴的なRing fingerモチーフを持ちGタンパク質αサブユニットGαsと相互作用する可能性のある候補分子が30種類見つかった。複数のE3 ligaseによってGαsがユビキチンン化される可能性、あるいはGαsの下流で働く新たなシグナル伝達分子の可能性が出てきた。今後、個々の候補分子の機能解析により大きな発展に結び付く予想以上の結果が得られ、大きな発展に結びつく可能性が見出された。
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