研究概要 |
近年発見されたインターロイキン(IL)-17産生ヘルパーT(Th17)細胞は様々な炎症性疾患に関わっており,IL-23はTh17細胞の悪性化および活性化に関わっている.IL-23受容体は,特異的なIL-23RとIL-12と共有するIL-12Rβ1の2つのサブユニットからなる.IL-23とIL-23Rの結合を阻害するとTh17細胞が減少し,炎症が鎮静化する.IL-23の構造は明らかにされているが,受容体の構造は何れも解析されておらず,IL-23と受容体の認識機構に関しては詳細な知見が得られていない.本研究の目的は,IL-23と2つの受容体との認識機構およびシグナル伝達機構を構造生物学的に解明することである. 本件度は,IL-23Rのドメイン(D)2-D3を大腸菌を用いて発現させ,精製を行った.この精製IL-23R D2-D3と調製法を既に確立済みのIL-23の結合実験をBiacoreを用いて行った.しかしながら,IL-23R D2-D3はIL-23と結合しなかった.このことから,IL-23との結合にはIL-23RのD1を介することが予想される.そこで,IL-23RのD1およびD1-D3の発現を大腸菌を用いて試みたが発現させることが出来なかった.次に,HEK293T細胞およびHEK293S細胞を用いてこれらのタンパク質の発現を試みたが,発現量が非常に低く,精製出来なかった.IL-12Rβ1については,大腸菌を用いた発現系を構築し,現在精製を行っているところである. 今後,これらの受容体の調製を行い,IL-23との複合体の構造を明らかにすることにより,これらの認識機構を構造生物学的に解明する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
IL-23Rのサイトカイン受容体ホモロジー領域であるD2-D3を調製し,IL-23との結合実験を行ったが結合しなかった.そこでD1を含むコンストラクトの調製を大腸菌およびヒトの293T細胞を用いて試みているが,今現在成功していない.またIL-12Rβ1については,大腸菌を用いた発現系の構築を終えたが発現量が低かったため.
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今後の研究の推進方策 |
IL-23RのD1またはD1-D3の発現を293T細胞を用いて行う.また他のタンパク質のシグナルペプチドとの融合タンパク質として発現させ,高発現の条件を見つけ出す. IL-12Rβ1については,大腸菌を用いた発現系の構築を終えたが発現量が低いため,現在発現条件やコンストラクトの改良を行い,高発現の条件を見出す.
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