公募研究
26Sプロテアソームは分子量250万、66個のサブユニットから形成される巨大なタンパク質分解酵素複合体であり、触媒部位を有する20Sプロテアソームと19S制御因子複合体から構成される。本複合体はユビキチンの付加された標的タンパク質を特異的に分解することにより、細胞周期の制御、抗原生成、タンパク質の品質管理などさまざまな役割を担っている。本研究では26Sプロテアソーム複合体の立体構造の決定を目指し、遺伝子組み換えにより精製用のタグを導入した酵母を利用し、精製、結晶化を行った。しかし、得られた結晶は20Sプロテアソーム単独状態のものであったことから、26Sプロテアソームの安定化条件の検討を行い、ATP類似化合物や阻害剤により安定性が向上することを見出した。また近年、耐熱性酵母(Kluyveromyces marxianus)が見出され研究が行われていることから、耐熱性酵母よりプロテアソームの精製を行い、その安定性を解析した。その結果、耐熱性酵母より精製したプロテアソームはこれまで実験に用いていた出芽酵母のものより安定であることが明らかになった。プロテアソームの複合体形成には専用のシャペロンタンパク質の関与が必要である。19S制御因子複合体の形成に関わる専用シャペロンタンパク質Hsm3とプロテアソームサブユニットRpt1のC末ドメインの複合体構造をX線結晶構造解析により決定した。また、プロテアソームとは異なるが生体内においてユビキチン-プロテアソームタンパク質分解経路を形成する、ユビキチン結合酵素を特異的に阻害することにより感染を拡大する赤痢菌エフェクタータンパク質Osp1を見出し、その立体構造を決定した。
2: おおむね順調に進展している
酵母26Sプロテアソームの安定化に寄与する化合物の検索を行い、安定化したタンパク質を用いて結晶化を行っている。また、耐熱性酵母26Sプロテアソームの精製を行い、安定性を確認した。プロテアソーム複合体形成シャペロンHsm3とRpt1Cの複合体、Osp1の結晶構造解析に成功した。
平成23年度の研究より決定した、酵母26Sプロテアソーム安定化化合物との複合体を作製し結晶化条件の検討を行う。さらに、遺伝子組み換えにより耐熱性酵母26Sプロテアソームの大量精製系の構築を行い、結晶化条件を検討する。また、プロテアソーム複合体形成シャペロンを利用することにより、26Sプロテアソーム形成過程に中間体として生成するサブ複合体を安定に精製し結晶化、X線結晶構造解析を行う。サブ複合体構造はプロテアソームの全体構造および機能の理解に有用であると共に、プロテアソームの分子集合機構の解明において重要な知見となる。複合体構造解析研究に加え、プロテアソーム関連タンパク質の構造解析研究として、相互作用タンパク質の精製系構築、結晶化を行う。
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