研究概要 |
急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia;AML)の原因の1つに,AML1-MTG8融合タンパク質の発現がある.この融合タンパク質はDNA結合ドメインであるRuntドメインをもつ.このRuntに対して標的DNAより強く結合するRNAアプタマー(AML38)が埼玉県立がんセンターの神津博士らによって作成された.本研究では,アプタマーが結合した時のRuntの立体構造をNMR法を用いて解析し,相互作用メカニズムを明らかにすることを目的とした. RuntとDNAの複合体について,永田らのNMR解析結果をもとに138残基中102残基の主鎖NHに由来するシグナルを帰属した.次にRunt/DNAとRunt/AML38の複合体の^1H-^<15>N HSQCスペクトルを比較した.帰属した102残基のシグナルのうち26個が消失し,12個のシグナルが大きくシフトした(NとNHの化学シフト差の加重平均値が0.1ppm以上).シグナルが消失あるいは大きくシフトしたアミノ酸残基を立体構造上にマッピングし,X線結晶構造解析により明らかにされているDNAの結合部位と比較した.C末端の近傍のDNA結合部位と同じ領域に化学シフトの変化がみられた.AML38の一部とDNAの構造が似ていることが明らかになっていることから,AML38はDNAと同様にRuntのC末端近傍に結合していると考えられる.一方,DNA結合部位と異なる部位にもNMRシグナルの変化がみられた.アプタマーはDNAよりRuntと広い範囲で相互作用していることが示唆されていることから,この相互作用がアプタマーの結合能の強さに寄与している可能性が考えられる.
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