本研究申請の目的は癌や細胞分裂に関わる脊椎動物キネトコア構成因子CENP-HIKLMNの構造と機能の関係を明らかにし、これら蛋白質複合体の分子基盤を解明する事にある。
今年度は昨年度の結果を踏まえてCENP-L/CENP-N複合体の結晶化を引き続き行った。全長CENP-L/CENP-N複 合体は発現量が低く、蛋白質の性質も悪いため発現系の改善を行った。大腸菌における発現量増大および可溶性向上のためにマルトース結合蛋白質との融合蛋白質として発現した。その結果、発現量及び可溶性画分が劇的に向上した。このようにして調製した蛋白質の結晶化を千種類程試みたがこれまでのところ結晶化につながるような条件は得られていない。
一方、CENP-L/CENP-N蛋白質複合体と他のキネトコア因子の関係を明らかにする目的でこれまでに分裂酵母において相互作用が報告されているCENP-Cの発現系構築を行った。ニワトリCENP-Cは864アミノ酸より構成されており、N末端にMis12複合体との相互作用領域、中央にCENP-Aヌクレオゾームとの相互作用領域、C-末端に二量体形成ドメインが存在する。このようなCENP-C蛋白質を5つの領域に分断しそれぞれ別個に発現系を構築した。全てマルトース結合蛋白質との融合蛋白質として発現したところ、可溶性の蛋白質として得られた。小スケールにて精製、相互作用解析したところ、C-末端領域が相互作用していた。今後は大規模精製を行って結晶化するとともに相互作用領域をさらに特定するために短いコンストラクトを作成し最小結合領域を特定する。またCENP-L/CENP-N複合体とCENP-Cの解離定数をITC等により測定しその物性を明らかにする。
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