研究領域 | 細胞シグナリング複合体によるシグナル検知・伝達・応答の構造的基礎 |
研究課題/領域番号 |
23121531
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
杉本 宏 独立行政法人理化学研究所, 城生体金属科学研究室, 専任研究員 (90344043)
|
キーワード | ヘム / トランスポーター / センサータンパク質 |
研究概要 |
病原微生物と宿主との間には必須栄養元素である鉄の争奪戦がくりひろげられており、病原菌の鉄代謝をターゲットにした創薬が期待されている。本研究では病原菌がもつ鉄の取り込みに関るタンパク質の作動原理を分子レベルで理解することを目的として、細胞膜でヘムセンサーとして機能する二成分情報伝達系のタンパク質ChrSと、ABCファミリーに属するヘムトランスポーター複合体の結晶構造解析を進行させた。 ChrSの結晶構造解析では、タンパク質の精製および結晶化の過程で最適な界面活性剤を用いることが成功のカギとなるため、ゲルろ過分析を用いて分子の均一性を評価し、結晶化に有利な条件を検討した。その結果、ChrSの結晶化にはじめて成功した。X線回折実験を行なった結果、分解能が7Å程度の反射が得られた。また、ChrSの情報伝達系の下流因子であるChrAの結晶が得られ、分解能が4Å程度のデータが得られた。分解能を向上させて立体構造が決定できれば、細胞の外の環境の変化感知が細胞内でのリン酸反応へと情報変換されるメカニズムを原子レベルで解明できると期待される。 病原菌由来のヘムトランスポーターの細胞外側でヘムを捕捉するタンパク質、膜貫通領域、ATP結合タンパク質の合計3種類のタンパク質の1:2:2複合体のの結晶化に成功し、X線回折実験を行なった結果、分解能が4Å程度の反射が得られた。機能解析に関しては、ヘムトランスポーターのATPase活性の輸送基質であるヘム濃度依存性を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヘムセンサーChrS可溶化条件を検討化した結果、凝集状態にあるタンパク質を大幅に減少させることができ、ChrSの結晶化に成功した。ヘムトランスポーターの結晶化にも成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
結晶の高分解能化をめざして引き続き試料調製条件の最適化を行なう。これには界面活性剤の最適化、モノクローナル抗体の作成を含む。また、ナノディスクを用いて可溶化したChrS/ChrA複合体の構造ダイナミクスについてSAXS法を用いた解析を行なう。
|