研究領域 | 細胞シグナリング複合体によるシグナル検知・伝達・応答の構造的基礎 |
研究課題/領域番号 |
23121532
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
佐藤 匡史 名古屋市立大学, 大学院・薬学研究科, 准教授 (80532100)
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キーワード | 積荷受容体 / GPIアンカー型糖鎖 / N結合型糖鎖 / X線結晶構造解析 / NMR解析 / 構造細胞生物学 |
研究概要 |
本研究では、小胞体積荷受容体によるGPIアンカー型およびN結合型糖タンパク質の分子認識および細胞内輸送機構の構造基盤の解明を目的としている。 (1)GPIの構造変化と積荷受容体p24によるGPIアンカー型タンパク質輸送の制御機構の解明 GPI糖鎖のPGAP1による脱アシル化およびPGAP5による脱リン酸化が、GPIアンカー型タンパク質の小胞体からゴルジ体への「輸送シグナル」となり、p24タンパク質がその糖鎖シグナルを特異的に認識することで、積荷受容体として機能することを明らかにした。 (2)GPIアンカー型糖鎖の化学合成法の確立 GPI糖鎖3-5糖ユニット(エタノールアミンリン酸化マンノース3糖-グルコサミン-イノシトール)の化学合成に成功した。現在、収率を向上させるべく、反応条件の検討を行っている。GPIアンカー糖鎖はタンパク質のC末端部分と結合するが、合成基質の非還元末端には、in vitro、in vivoの活性試験において精製と検出を容易にするように疎水性の蛍光分子を導入した誘導体を合成した。 (3)積荷受容体ERGIC-53/MCFD2複合体による血液凝固第V/VIII因子の分子認識機構の解明 積荷受容体(ERGIC-53/MCFD2)とN結合型糖タンパク質(血液凝固第V/VIII因子)のNMR解析による相互作用解析を行った。その結果、ERGIC-53と複合体を形成したMCFD2がEFハンドタンパク質に典型的な様式で血液凝固第VIII因子と相互作用することを見出した。またERGIC-53/MCFD2複合体の新しい3つの結晶系におけるX線結晶構造解析を行い、MCFD2のコンフォメーション多形を捉えることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リガンドの調製は、最長の5糖ユニットからなるGPIアンカー型糖鎖誘導体の化学合成に成功しており、計画通りに進んでいる。現在、収率を向上させるべく、反応条件の検討を行っている。また、p24ファミリータンパク質の小胞体内腔領域および各ドメイン(GOLDドメイン、コイルドコイルドメイン)の発現・精製に成功している。さらに、N型糖タンパク質輸送系では、輸送レクチンと血液凝固因子との相互作用部位をNMR解析により明らかにしている。以上、総合的に判断しておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
p24タンパク質の結晶化およびX線回折データ収集・立体構造決定を行う。また、p24タンパク質と合成したGPIアンカー型糖鎖3-5糖ユニット複合体のX線結晶構造解析およびNMR解析を行う。PGAP5に関しては、大腸菌に加えて哺乳動物細胞を用いた発現系も併せて検討を行う。 N型糖タンパク質の分子認識機構についても併せて検討し、小胞体品質管理機構の包括的な理解を目指す。前年度のNMR解析の結果を基に、血液凝固因子の相互作用部位ペプチドとERGIC-53/MCFD2との複合体のX線結晶構造解析を行う。相互作用部位ペプチドは溶解度が非常に低いことが判明したため、融合タンパク質として結晶化を行う予定である。
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