研究領域 | 細胞シグナリング複合体によるシグナル検知・伝達・応答の構造的基礎 |
研究課題/領域番号 |
23121534
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
鎌田 勝彦 独立行政法人理化学研究所, 平野染色体ダイナミクス研究室, 専任研究員 (70360526)
|
キーワード | 染色体凝縮 |
研究概要 |
原核生物は、核膜をもたず、その染色体DNAは核様体と呼ばれる構造体を形成している。枯草菌を初めとする多くのバクテリアでは、SMC(Structural Maintenance of Chromosomes)複合体が存在し、核様体の構築と分離に関与している。本申請の大きな研究目的は、まず、このバクテリア型のコンデンシン複合体の制御サブユニット(ScpAとScpB)のどのようなシグナルが、SMC蛋白質の加水分解反応過程を制御しているかを理解することにある。そのため、立体構造解析を行い、生化学的実験による検証を行う。さらに、このバクテリア型での複合体調製のノウハウを生かし、真核生物のコンデンシンの機能ドメインを同定することを目指す。 本年度は、SMC蛋白質のATPase活性ドメイン及び、ScpA-ScpB複合体を調製し、様々な条件下で結晶化を試みた。結晶化が成功したものについては、高輝度X線源を用いて回折実験を行い、三次元構造を決定した。ScpA-ScpB複合体の構造解析から、ScpAの可変構造を維持するための特異的なScpBのシャペロン様構造を明らかにすることができた。この構造情報から、SMC蛋白質の加水分解活性を制御すると考えられる部位に、特異的に変異を導入することができた。このScpA、ScpB変異体を用いた生化学的実験の結果から、いくつかの部位が機能的に重要であることが検証できた。 また、このバクテリアの共発現系と調製のノウハウを生かし、真核生物型のコンデンシン複合体の解析へと発展させるため、その制御サブユニットとSMC蛋白質のATPase活性を担うドメインをクローニングし、バキュロウイルスを用いた昆虫細胞による発現系を構築することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分光器等の不調で蛋白質濃度調製がうまく行かなかったトラブルはあったが、当初の目的の半分は計画的通りに進行させることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
ここまでの構造解析の結果については、来年度の早い段階で論文化を進める。また、真核生物のコンデンシンについては、昆虫細胞のスケールアップを計り、1Lスケールで大量発現可能なシステムを構築し、コンデンシン制御サブユニットの構造的安定性を生化学的に調査する。
|