研究概要 |
本研究では、酸性化と温暖化に焦点を当てて、これら環境ストレスがサンゴ礁生態系に要となる生物(サンゴ類,海草類、棘皮動物類)の整理/生態に及ぼす複合影響を室内実験及び野外実験より評価する事、さらにサンゴ礁沿岸域の海洋環境(特に水温とpH)を長期的にモニタリングすることにより、温暖化及び酸性化の現状把握を目的とした課題である。上記目的の中当該年度は下記の項目の実施を行った。1.沖縄本島,瀬底研究施設前に多項目センサーを設置し、海水温,pH塩分、DO,水深の連続測定を実施した。2.サンゴ(Acropora digitifera)を自然光,自然水温下で高CO2環境下で飼育し、石灰化/光合成/呼吸/光合成活性/褐虫藻密度への影響を評価した。その結果、これまでの研究結果とは異なり、必ずしも酸性化がサンゴの石灰化速度を低下させない事が明らかとなった。その原因としては、高光環境ではCO2の増加が光合成活性の増加をもたらし、それによって石灰化への影響が緩和される可能性が示唆された。3.シラヒゲウニによる海草類への摂食率が酸性化/温暖化によって受ける影響の評価を行った。その結果、酸性化はウニの摂食率は低下させない一方,水温の上昇は摂食率の低下をもたらすこと、さらには水温上昇と酸性化は相乗的にウニの摂食率を低下させる事が明らかとなった。本結果より、今後の気候変動はウニ等の草食生物の摂食率に影響し、サンゴVS海草/海藻類の相互作用を大きく改変する可能性が示唆された。4.オニヒトデの幼生を酸性化環境下で飼育した結果、オニヒトデ幼生の発生異常を引き起こし、特に骨片形成の開始がみられるブラキオラリア期に影響を及ぼす事が明らかとなった。本研究結果より、酸性化はオニヒトデの個体群動態に大きく影響する可能性が示唆された。
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