研究領域 | 血管ー神経ワイヤリングにおける相互依存性の成立機構 |
研究課題/領域番号 |
23122507
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
林 良敬 名古屋大学, 環境医学研究所, 准教授 (80420363)
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キーワード | 糖尿病 / 再生医学 / インスリン / 細胞外マトリックス / 基底膜 / 発生 / グルカゴン / 内分泌 |
研究概要 |
膵臓のランゲルハンス島(膵島)はグルカゴンを産生するα細胞や不シスリンを産生するβ細胞など複数の細胞種からなる微小臓器である。膵島は、豊富な血流と自律神経入力を受けているが、血管・神経ワイヤリング形成の過程および制御機構に関する研究は少ない。膵臓には数十~百万個の膵島が散在し、その多くは血管に沿って分布している。グルカゴン遺伝子にコードされるプログルカゴンからは膵島においてはグルカゴンが、腸管L細胞においてはグルカゴン様ペプチド1(GLP1)が産生される。我々は膵島のα細胞および腸管L細胞においてGFPを発現する、グルカゴン遺伝子-GFPノックインマウスを作成しこれら細胞・組織の解析を進めてきた。このノックインマウスのホモ接合体(GCGKO)は、プログルカゴンに由来するペプチドを欠損し、膵島GFP陽性細胞("α"細胞:グルカゴンは産生しない)の過形成や膵島数の増加を示す。 これまでに、血管のマーカー分子PECAM1や基底膜のマーカー分子ラミニン、グリアのマーカーであるGFAP、交感神経のマーカーであるチロシンヒドロキシラーゼ、また血管内皮細胞成長因子などに対する抗体を用いた免疫組織化学解析により、GCGKOおよび対照群の膵島における血管および神経の分布を解析してきた。その結果、GFP陽性細胞の過形成が進んだ膵島において、血管および神経の構造に異常が認められ、また成長因子や膵島ホルモンの発現が低下していることを見いだした。これらの結果はプログルカゴンに由来するペプチドが直接的あるいは間接的に血管・神経のワイヤリング制御に関与していることを示していると考えられる。膵島と血管・神経の相互作用機構の解明は膵島の再生医学を推進する上でも重要と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GCGKOと対照群の間で膵島に分布する血管・神経の構造に差が認められたため、プログルカゴンに由来するペプチドが直接的あるいは間接的に血管・神経ワイヤリングを制御していることが確認できた。この結果、グルカゴン遺伝子-GFPノックインモデルが、膵島と膵島と血管・神経の相互作用機構の解明に有用であるという前提の妥当性が強化されたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析は動物個体の組織の形態観察を中心としたものであったが、膵島と血管・神経の相互作用のメカニズムをより詳細に解明するためには器官培養系のタイムラプス解析が必要となる。現在、同解析を効率良く進めるためのセットアップを進めている。一方で、動物個体の発生・発達過程を追った解析や、薬物投与によるβ細胞障害などが血管・神経系におよぼす影響の解析も進める予定である。
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