1) RMSから大脳皮質・線条体へと移動する神経前駆細胞の解析 RMSから大脳皮質・線条体へと移動する神経前駆細胞を調べるために、蛍光レポーターマウスとタモキシフェン誘導性Creリコンビナーゼを組み合わせ、in vivo神経細胞ラベルの系を確立した。Nestinプロモーター下にCreERT2を発現するトランスジェニックマウスを用いて、RMSから大脳皮質・線条体と移動する神経前駆細胞の存在が確認され、細胞移動が血管に沿っていることが明らかとなった。また、Girdinのリン酸化機能制御についてを調べるため、Girdinの各種リン酸化部位に対する抗リン酸化抗体を作成して免疫染色を行ったところ、Y1799リン酸化部位に対する抗体が検出感度が高いことが分かった。この抗体を利用して、生後の大脳神経の発育を調べたところ、RMSおよび嗅球で血管に沿って移動する神経前駆細胞でGirdinのリン酸化が強く起こっていることが明らかとなった。更に、RMS組織をマトリゲル中で培養すると起こる神経前駆細胞のchain migrationが、Src阻害剤であるPP2の添加にて強く抑制されると共に、Y1799リン酸化が抑制されることが判明した。したがってY1799リン酸化はSrcキナーゼの下流で制御され、神経前駆細胞の移動に重要であることが示唆された。 2) 神経特異的Girdinノックアウトマウスにおける血管発達の障害 Girdinは脳の神経細胞および血管にて発現を示す。神経および血管組織特異的なコンディショナルノックアウトマウスを解析したところ、血管内皮特異的なノックアウトでは血管発達は正常で、神経特異的なノックアウトで血管発達が障害されることが明らかとなった。従って、神経組織にてGirdinが血管発達に関連する因子の制御に働いていると考えられた。
|