研究領域 | 血管ー神経ワイヤリングにおける相互依存性の成立機構 |
研究課題/領域番号 |
23122511
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木戸屋 浩康 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (00543886)
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キーワード | 血管新生 / 発生 / 再生 / 血管と神経 / ワイヤリング |
研究概要 |
本申請研究では、マウス皮膚の発生モデルを利用する解析系により、神経-動脈-静脈の走行性制御のメカニズムおよび走行性がもたらす生理的意義の解明を目的として研究を行う。神経-動脈-静脈が併走する分岐パターンを示すことは古くから認知されているが、血管と神経がどのような相互作用を持つか、走行性が実際にどのような生理現象に重要であるかなどは明確になっていない。走行性についての理解を深めることが、血管や神経の再構築を必要とする再生医療の実用化には不可欠である。そこで、申請者が神経-動脈-静脈の走行性に関与する分子として機能を同定したApelin/APJ系を中心に研究を行った。 まず、神経と動静脈血管の併走性の構築におけるApelin/APJの役割を明らかにするため、ApelinおよびAPJ欠損マウスの胎児期の皮膚を解析した。また、Apelin刺激によって誘導される下流因子について、マイクロアレイによる網羅的解析を行い、幾つかの候補分子を同定した。次に、神経-血管ワイヤリングの解析系として皮膚の発生モデルとして、マウスの組織をex vivoにて培養して発生させる実験系について検討を行った。この系を用いて、Apelinが血管走行性に重要であることタイムラプス顕微鏡による撮影を行い明らかにした。 続いて、血管神経の走行性の生理的意義を検討するため、走行性に以上が認められるモデルマウスを用いて検討を行った。まず、炎症反応への応答性について解析したところ、走行性以上が炎症反応の遅延をもたらすことが明らかとなった。その他の生理的意義についても、現在検討中である。また、神経血管走行性におけるApelin/APJ系の影響を詳細に解明するため、神経や血管に特異的な遺伝子欠損マウス(conditional knockout: CKO)を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究では、当初に目標としていた、Apelin/APJ欠損マウスの神経血管の走行性解析、Apelinによって誘導される下流因子の同定、ex vivo解析系の構築、走行性の生理的意義の検証、神経や血管に特異的なapelin遺伝子欠損マウスの作成、の研究を行い、Apelin/APJ系の走行性制御における重要性を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も現在進行中の解析を中心に研究を進めていく予定である。具体的には、以下に示すとおりである。 (1)Apelin刺激によって誘導される下流因子について、幾つかの候補分子を同定しているので、引き続き選別を行うと共に、それらとapelinの間の詳細なメカニズムを解明する。 (2)血管走行性のもたらす生理的意義について、体温の調整機構を中心に解析を進めて行く。 (3)血管や神経に特異的なapelin遺伝子欠損マウスを用いて、神経や血管の発生における変化を観察し、神経血管の走行性制御におけるapelin/APJ系の役割をより明確にする。
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