研究領域 | 血管ー神経ワイヤリングにおける相互依存性の成立機構 |
研究課題/領域番号 |
23122512
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
村松 里衣子 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (90536880)
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キーワード | 軸索 / 側枝 / cAMP / 内皮細胞 / 収縮 |
研究概要 |
脳・脊髄が外傷や異常な免疫応答により傷害されると、病変部位に応じて様々な神経機能障害があらわれる。これは、神経機能を担う神経回路が損傷された結果であり、症状を改善させるには失われた神経回路の再生が求められる。しかし、発生期や末梢神経は再生するが、大人の中枢神経の再生はわずかであり、損傷前と同程度まで神経機能が自然回復することは難しい。中枢神経の再生能力を高め症状を治癒させることを最終目標とし、まずは中枢神経の自発的な再生に関わる分子機構の解明に挑んだ。 まず病巣部位における組織変化を経時的に観察した。その結果、中枢神経傷害後の神経回路の自発的な再生に先立ち、病巣部では顕著な血管新生が認められた。また、血管を構成する血管内皮細胞と神経細胞の共培養実験から、血管が放出する因子に神経突起の伸長を促進するパワーが備わることを見出した。さらに薬理学的・遺伝学的手法を用いて、神経再生を促す血管由来因子の同定に成功し、細胞内でのシグナル伝達機構も解明した。 これらの結果から、損傷領域で形成した新生血管が、同定因子の産生を高め、神経回路の自発的な再生を促すことを推察した。そこで、中枢神経傷害モデル動物を用いて同定分子の作用を減弱させた際の神経症状自然回復への作用を検討した。病巣部に同定分子の作用を減弱させる薬剤を持続的に処置したところ、時間経過に伴う神経症状の改善が抑制された。このことから、新生血管由来の因子が個体レベルでの神経再生に寄与する可能性が示された。今後は、組織レベルで神経再生への関与の解析、そして同定因子の作用を増強させた際の治療効果の検証へと展開させていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
薬理学実験において複数の候補薬剤を購入できたため、条件検討の同時進行ができ、標的分子の絞り込みが容易になった。また、持続的に薬剤を投与する動物実験でも、長時間安定した薬剤処置が可能な市販の投薬ホンプを購入できたため、効率よく実験を進めることができた。これらのことから、当初の計画以上に研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
薬理学実験の条件検討を初年度の内に完了できたため、今後は遺伝学的な手法の確立を前倒しして検討していく。予定通り、個体レベルで遺伝子発現の制御は、遺伝子導入試薬の局所注入あるいはウイルスベクターの構築により実施する。遺伝子導入試薬は市販のものを用いて、導入の可否の検討から始める。ウイルスベクターの作成は、所属研究室で実績がある。すなわち、本課題の今後の研究計画に問題点はなく、速やかに計画に着手することができる。
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