公募研究
1. 成熟期ラットの硝子体内にN-methyl-D-aspartate(NMDA)を投与すると、網膜神経節細胞が脱落し、次いで網膜毛細血管内皮細胞が脱落するが、本現象について新生仔期(1-2週齢)・幼若期(3-4週齢)・成熟期(7-15週齢)ラット間で比較した。NMDAによる網膜神経傷害は、新生仔期において最も大きく生じ、成熟に伴い小さくなった。血管傷害も同様で新生仔期で最も顕著であった。ラット新生仔期は網膜血管の発生期であり、神経節細胞の脱落が新生された血管の脱落と血管新生の抑制を起こすことが示された。網膜血管の発生にはアストロサイトに発現するVEGFが重要な役割を担っているが、神経節細胞の脱落が血管の発生過程に障害を与えたことは非常に興味深い。また15週齢ラットの検討では、血管傷害が生じにくくなるとの結果が得られ、「網膜血管の恒常性維持における網膜神経依存性」が加齢に伴い変化する可能性が示された。2. 申請者は、成熟期ラットの硝子体内にPI3キナーゼ阻害薬であるウオルトマニンを投与すると、網膜毛細血管内皮細胞の脱落が網膜神経節細胞の脱落に先行することを見出している。本現象においては、成熟に伴い血管傷害が増大することが示され、加齢に伴う血管内皮細胞フェノタイプの変化にPI3キナーゼ下流シグナルの関与が示唆された。3. 成熟期ラットのNMDA硝子体内投与による網膜血管傷害と神経傷害がTGF-beta阻害薬により抑制されることが見出されたので、幼若期ラットにおいても検討を行い、網膜血管傷害におけるTGF-betaの関与を示唆した。4. 新生仔期ラットにストレプトゾトシンを単回投与し糖尿病を誘発した2週間後に、NMDAを硝子体内投与し神経傷害と血管傷害について検討を行ったが、糖尿病の有無による顕著な違いは認められなかった。糖尿病の期間を延長させた更なる検討が必要である。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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