• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2011 年度 実績報告書

大脳皮質における興奮性、抑制性神経細胞-血管ワイアリングの解明

公募研究

研究領域血管ー神経ワイヤリングにおける相互依存性の成立機構
研究課題/領域番号 23122521
研究機関生理学研究所

研究代表者

江藤 圭  生理学研究所, 発達生理学研究系, NIPSリサーチフェロー (30545257)

キーワード血管 / 神経 / アストロサイト / 2光子顕微鏡 / 大脳皮質
研究概要

大脳皮質における神経活動の時空間的活動と血流の相関は以前から示唆されており、機能的核磁気共鳴法や内因性シグナルなどの脳機能計測法に広く利用されている。しかし、興奮性、及び抑制性神経細胞の活動が直接血管に与える影響とその機序は、技術的な制限から調べることが困難であった。平成23年度は、2光子顕微鏡を用いたin vivoイメージングと薬理学的手法を組み合わせ、抑制性神経細胞活動と血管との関係性を明らかにすることを目的として研究を行った。まず、抑制性神経伝達物質GABAを麻酔下マウスの脳表に投与し、その血管径への効果を検討した。その結果、GABA投与により血管径が収縮した。GABAを脳表に投与すると、興奮性神経活動を抑制し、その影響を見ている可能性もある。そこで、微小ガラス管を脳内に挿入し、GABAを局所投与し血管への作用を検討した。GABAにより血管径の収縮だけでなく、拡張が生じた。次に、実際にGABAを放出する抑制性神経細胞を活性化させることで、血管がどのように変化するか検討した。この実験では抑制性神経細胞が蛍光蛋白質で特異的に標識されている遺伝子改変マウスを用いた。抑制性細胞はケージドグルタミン酸のin vivoアンケージングにより刺激した。ケージドグルタミン酸は特定の波長の光によりグルタミン酸となり、細胞に作用することができる。この刺激で神経細胞が活性化しているかどうかをin vivoカルシウムイメージングで確認し、刺激条件を確定した。この条件で、抑制性神経細胞を刺激すると、近傍の血管の収縮、弛緩が起きた。このとき、抑制性細胞と血管の間に存在するアストロサイトはカルシウム応答を示すこともあれば、示さないこともあった。これらの結果から、in vivoにおいて、抑制性細胞は抑制性伝達物質GABAを放出することにより、血管径を調節している可能性が示唆された。この結果は、これまで技術的な制約により調べることが困難であった生体内における抑制性細胞の血管調節機構の一端を明らかにしている可能性があり、生理学的意義のある研究であると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の予定では興奮性神経細胞と抑制性神経細胞の血管調節機構を明らかにすることを目的としていた。23年度は、脳内での薬液投与法やin vivoアンケージング法など新規手法を確立するのに時間を要してしまったため、抑制性細胞と血管について大まかな現象は捉えられてはいるものの、詳細な機序などを捉えるには至っておらず、また興奮性細胞と血管に関する研究を行えていない。

今後の研究の推進方策

抑制性細胞と血管の関係に着目して実験を行なってきたがいくつかの問題点が残っており、解決する必要がある。(1)GABAの投与が本当に血管に作用しているかについて詳細に調べきれていない。GABA受容体やGABAトランスポーターの阻害剤により、観察される応答が抑制できるか検討する。(2)抑制性細胞のグルタミン酸アンケージングにより起きる血管調節がGABAの放出で起きているかを調べるために、GABA受容体やGABAトランスポーターの阻害剤により、観察される応答が抑制できるか検討する。また、興奮性神経細胞がグリア細胞を介してどのように血管を調節するのかについても調べる予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Synaptic Structure and Function in the Mouse Somatosensory Cortex during Chronic Pain : In Vivo Two-Photon Imaging2012

    • 著者名/発表者名
      Sun Kwang Kim, Kei Eto, Junichi Nabekura
    • 雑誌名

      Neural Plasticity

      巻: 640259 ページ: 8

    • DOI

      10.1155/2012/640259

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Taltirelin, a thyrotropin-releasing hormone analog, alleviates mechanical allodynia through activation of descending monoaminergic neurons in persistent inflammatory pain2011

    • 著者名/発表者名
      Kei Eto, Sun Kwang Kim, Junichi Nabekura, Hitoshi Ishibashi
    • 雑誌名

      Brain Research

      巻: 1414 ページ: 50-57

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Inter-regional contribution of enhanced activity of the primary somatosensory cortex to the anterior cingulate cortex accelerates chronic pain behavior2011

    • 著者名/発表者名
      Kei Eto, Hiroaki Wake, Miho Watanabe, Hitoshi Ishibashi, Mami Noda, Yuchio Yanagawa, Junichi Nabekura
    • 雑誌名

      Journal of neuroscience

      巻: 31(21) ページ: 7631-7636

    • 査読あり
  • [学会発表] 一次体性感覚野における慢性疼痛メカニズムの解明2012

    • 著者名/発表者名
      江藤圭、鍋倉淳一
    • 学会等名
      第21回神経行動薬理若手研究者の集い
    • 発表場所
      コープイン京都(京都)
    • 年月日
      2012-03-13
  • [学会発表] Inter-regional remodeling between the primary somatosensory cortex and anterior cingulate cortex accelerates chronic pain behavior2011

    • 著者名/発表者名
      Kei Eto, Hiroaki Wake, Miho Watanabe, Hitoshi Ishibashi, Junichi Nabekura
    • 学会等名
      The 34nd Annual Meeting the Japan Neuroscience Society
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(横浜)
    • 年月日
      2011-09-16
  • [学会発表] Enhanced activity of mouse layer 2/3 inhibitory neurons in the primary somatosensory cortex in chronic inflammatory pain2011

    • 著者名/発表者名
      江藤圭
    • 学会等名
      6th international conference of Neurons and Brain Disease in Toyama, Annual meeting of association for Neurons and brain disease
    • 発表場所
      ANAクラウンプラザホテル富山(富山)
    • 年月日
      2011-08-03
  • [図書] 実験医学2011

    • 著者名/発表者名
      加藤剛, 江藤圭, 金善光, 鍋倉淳一
    • 総ページ数
      7
    • 出版者
      中枢神経系の多光子励起in vivoイメージング

URL: 

公開日: 2013-06-26  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi