研究実績の概要 |
本年度は、大脳皮質形成障害が起こること、およびその表現型が判っているマウスモデルから脳血管形成機構を追求し、発生期マウスの大脳皮質形成と血管形成の相互連関の実態の一端を明らかにした。 大脳皮質形成に必須の役割を果たす低分子量G蛋白質Rap1の上流分子であるDab1とreelinに異常を有するyorariおよびreelerマウスを大脳皮質形成障害モデルマウスとして解析した。これらのマウスでは大脳皮質の層構造形成障害が認められる。興味深いことに、これらのマウスでは、発生期(E17とP1)において大脳皮質表層部の血管走行に顕著な変異が認められた。これらの結果は、大脳皮質形成と血管ネットワーク形成が密接に連関している可能性を示唆する。 次いで、大脳皮質の層構造は正常であるが皮質自体が発育不全になる大脳皮質形成障害モデル、SIP1-cKOマウス、の解析に着手した。このKOマウスは、Tamoxifen投与条件を変えることにより転写因子SIP1発現量を変化させることが出来る。そこで、形成不全状態が異なる大脳皮質切片を作成して、血管形成への影響を解析した。その結果、発生期の大脳皮質形成と血管ネットワーク形成が協調的に進行する可能性が示唆された。すなわち、大脳皮質形成が正常に進まない限り血管ネットワーク形成も進行しないことが判明した。 さらに、前年度に引く続き、マウス発生期(E13,E15, E17, P0, P7, P30の各時点)における大脳皮質血管の形成状態を観察し、脳血管アトラスの作成を継続した。
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