成体では抑制性に作用するGABAは未成熟な神経細胞では興奮性伝達物質としてはたらくが、これはCl^-イオン輸送体KCC2の活性が発達と共に上昇するためである。ラット・マウスでは脳幹の細胞や大脳皮質形成過程の辺縁帯カハール・レチウス(CR)細胞が出生前後に既にKCC2を発現していることが報告されているが、反対する報告もある。前年度は免疫染色法やin situ hybridization法を用いてともに大脳皮質形成過程においては早生まれであるサブプレート(SP)細胞とCR細胞でKCC2の発現レベルが異なることを見出した。そのため、ホールセル・パッチクランプ法でSP細胞とCR細胞で細胞内Cl^-([Cl^-]_i)濃度の指標となるGABAの逆転電位(E_<GABA>)を測定したが、有意な差が認められた。これは想定外の結果であったため、本年度は正確に([Cl^-]_i)を測定することができるグラミシジン穿孔パッチクランプ法を行った。しかし、ホールセル・パッチクランプ法の結果と同じく、SP細胞のE_<GABA>はCR細胞のE_<GABA>より過分極側にシフトしている傾向があった。
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