研究概要 |
哺乳類大脳において神経幹細胞は発生時期に応じて細胞分裂のパターンを変化させる。このパターン変化がどのような機構でおこっているのかを知るために、神経幹細胞の経時的な遺伝子発現の変化に注目し解析をおこなった。まず、これまでに得ているマウス胎生11,14,16日目の神経前駆細胞由来の単一細胞由来cDNAに加えて、胎生10,12,13日目の各発生ステージにおいても、単一細胞由来cDNAを作成した。DNAマイクロアレイの結果の主成分分析等から、神経幹細胞の時間軸変化を代表する遺伝子セット21個を同定することができた。この遺伝子セットを用いて、新たに作成したcDNAをより詳細に検討した結果、マウス大脳では、神経幹細胞は胎生12日目に、その遺伝子発現パターンを大きく変化させていることが明らかとなった。 引き続いて、神経幹細胞の、発生時期に応じた時間軸に沿った遺伝子発現パターンの変化に、具体的にどのような因子が関与しているのかの検討を行った。胎生12日目に大きな遺伝子発現変化がおこることが明らかとなったため、その時期を挟んでの実験操作と解析が必要である。胎生10日目、11日目という初期胚への遺伝子導入が必要であるため、この時期へのエレクトロポレーションによる生体内遺伝子導入法の検討を行い、いくつかの手技の改良を行った。その後、まず、時間軸にそった遺伝子発現のパターン変化におよぼす細胞周期の影響について検討を行った。未分化性を維持させるために活性型Notchを強制発現、した下で、細胞周期関連遺伝子を操作し細胞周期進行を停滞させた場合に、神経幹細胞の遺伝子発現がどのように変化するのかを調べるために、胎生11日胚の大脳に遺伝子導入を行い、胎生14日目に遺伝子操作された神経幹細胞をピックアップし、複数個の単一細胞由来cDNAを作成することができた。
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