公募研究
高次機能発現において、大脳新皮質が最も重要な役割を果たすことは、多くの研究者が認めるところであろう。しかし、その構造的基盤である局所神経回路、そしてその形成メカニズムについては、未だ解析が進んでいないのが現状である。本研究課題では、parvalbumin(PV)発現抑制性神経細胞に焦点を当て、抑制性神経細胞が備えるシナプス結合様式のルール、および特異的シナプス結合を形成・維持するメカニズムの解明を目的とする。(I)抑制性神経細胞が構成する神経回路の解析。申請者らが開発してきた遺伝子改変マウス(PV発現細胞をゴルジ染色様に標識;Genetic Golgi-like labeling)やウイルスベクターを用い、PV発現細胞へのシナプス入力を定量的に記述する。(I-a)興奮性・抑制性シナプス入力:H23年度は、PV発現細胞に対する興奮性・抑制性入力については解析が終了し、学術誌に掲載した。(I-b)抑制性シナプス入力の分類:各種抑制性入力についても検討を行った。PVもしくはsomatostatim(SS)発現細胞からの入力は樹状突起を好み、vasoctive intestinal peptide(VIP)発現細胞からの入力は細胞体を好むことが分かった。現在、投稿準備中である。(I-c)PV発現細胞間のシナプス結合特性(単一細胞レベル):PV発現細胞特異的にCreを発現するマウスとウイルスベクターも利用し、単一PV発現細胞がシナプス結合するPV発現細胞の数・空間的分布を解析する。現在、ウイルスベクターの開発を行っている段階である。(II)抑制性神経回路を形成するメカニズムの考察・解析:(I)で得られた結果をもとに、特異的シナプス結合を実現する実体と考えられる分子の同定を目指す。H24年度に遂行する予定である。
2: おおむね順調に進展している
(I-a)PV発現細胞に対する、興奮性・抑制性入力の定量的解析については、予定通り学術誌に掲載することができた。(I-b)各種抑制性入力の定量的解析については、現在投稿準備段階であり、おおむね予定通りである。(I-c)各Creマウスとウイルスベクターを組み合わせることで、単一PV発現細胞の可視化を試みているが、感染数がなかなか安定しない状況である(ゼロ~多数)。早期に解決を図りたい。(II)特異的シナプス結合を実現する分子の同定があまり進展していない。引き続き検討を進めると同時に、新たな戦略を練っているところである。
(I-b)については、学術誌への掲載を早期に果たす。(I-c)については、ウイルス液の濃度・量を調整することで、成体マウスにおける感染数をコントロールし、実験効率を上げる予定である。(II)については、他分野の先生方の意見も取り入れながら、多角的な視点でアプローチしたいと考えている。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (14件) 備考 (1件)
Cereb Cortex
巻: (in press)
10.1093/cercor/bhr356
European Journal of Neuroscience
巻: 35(6) ページ: 838-854
10.1111/j.1460-9568.2012.08027.x
The Anatomical Record
巻: 295(4) ページ: 641-651
10.1002/ar.22426
http://www.mbs.med.kyoto-u.ac.jp/default.html