研究概要 |
大脳皮質の抑制性介在ニューロンの多様性は大脳皮質の高度な機能の発現にとって極めて重要と考えられるものの、介在ニューロンによって形成される局所回路は極めて複雑であるため、その機能の全容の解明には至っていない。またその多様性の理解には、その構築プロセス、即ち発生の解明が重要である。これまでの転写因子発現時期と部位の特異性を利用した研究で、介在ニューロンの誕生部位と時期とがそのサブタイプ決定に重要な要因であることが示されているが、多様性の一部しか説明できていない。その理由の一つとして考えられるのが、標識に利用される転写因子の発現が脳室に接するprogenitorに必ずしも限局されていない事が考えられる。そこで本研究では、特定の発生時期に脳室層に存在するprogenitor から生まれる細胞がニューロンに分化するまでに分裂する回数の違いによって異なる運命を辿るか否かの解明を目指した。 皮質介在ニューロンの標識は子宮内電気穿孔法で行った。遺伝子導入はINが生まれ始める胎生10.5日目以降におこなった。導入するプラスミドとしては、通常用いられる mcherry などのプラスミドの他に transposase を利用したプラスミドを用いた。具体的にはTol2トランスポゼースをコードする pCAAGGS-T2TP (Kawakami et al., 2004)とpT2K-CAGGS-EGFP(Sato et al., 2007) 、即ちTol2 transposon-flanked EGFPとを混合したもの(以下 Tol2EGFPと記す)を用いた。 その結果、mCherry/GFP2重陽性細胞は皮質の深い層に多く存在し、GFPのみを発現する細胞は皮質全体に広く分布していた。この結果はニューロンに分化するまでにprogenitorが分裂する回数の違いにより異なる運命を辿ることを示している。
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