研究領域 | 神経細胞の多様性と大脳新皮質の構築 |
研究課題/領域番号 |
23123512
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
服部 剛志 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50457024)
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キーワード | 大脳皮質 / 発生 / 層構造 / 細胞移動 / 精神疾患 |
研究概要 |
DBZが生体の大脳皮質形成過程においてどのような役割を持っているかを検討するために、まず、大脳皮質発生時におけるDBZの発現をin situ hybridization法で検討した。DBZは胎生期において大脳皮質に強く発現し、特に脳室の周囲に強く発現していた。このことより、DBZが大脳皮質の形成に関与している可能性が認められたため、次に、DBZノックアウトマウスを使用し、その大脳皮質の形態学的解析を行った。Nissl染色やクリューバーバレラ染色を行って、脳構造の異常がないかを検討したが、DBZノックアウトマウスでは大きな構造異常は認めれらなかった。次に、大脳皮質の層構造を詳細に検討するために免疫染色、in situ hybridizationを行った。その結果、大人のノックアウトマウスでは層構造に異常は認められなかったが、胎児脳において層構造に乱れが認められた。次に、大脳皮質の層形成時の神経細胞移動に異常があるかどうかを検討した結果、胎生期後半に細胞移動の遅れが認められた。 これらの結果より、DBZは大脳皮質形成時の細胞移動に関与していることが明らかとなった。DBZは精神疾患脆弱因子であるDISC1の結合因子である。DISC1もDBZと同様に大脳皮質の形成に関与していることが知られている、よって、DISC1とDBZの相互作用が大脳皮質の形成に関与し、そのことが精神疾患の発症に影響を与えている可能性が考えられる。今後はDISC1とDBZの相互作用がどのように大脳皮質の形成に関与しているか、また、その分子メカニズムを検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定であったノックアウトマウスの脳構造の解析、大脳皮質の層構造の解析、大脳皮質形成時の細胞移動の検討のすべてを行い、ノックアウトマウスで異常があることを明らかにしたため、目的をほぼ達成したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後はDBZノックアウトマウスの大脳皮質で細胞移動に遅れが生じる分子メカニズムの解明、また、軸索や樹状突起の形成に異常が生じるか否かを明らかにする。 行動学的解析も行い、統合失調症やうつ病で見られるような行動異常があるかどうかを明らかにする。
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