研究領域 | 神経細胞の多様性と大脳新皮質の構築 |
研究課題/領域番号 |
23123513
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
遠藤 光晴 神戸大学, 医学研究科, 助教 (90436444)
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キーワード | 神経幹細胞 / 自己複製 / 一次繊毛 / Wntシグナル / 大脳皮質 / IFT20 / 平面内細胞極性 |
研究概要 |
本研究の目的は神経幹細胞の非対称分裂を介した自己複製の分子機構を解明することであり、大脳皮質の形成において多様なニューロンが産生される仕組みの理解に繋がることが期待される。発生過程の大脳皮質における神経幹細胞は非対称分裂によりニューロンを産生しながら自己複製を行う。分裂後の細胞の運命決定において、一次繊毛の形成と機能が関わることが示唆されているが、その役割についての詳細は不明である。まず神経幹細胞における一次繊毛の役割を明らかにするために、培養神経幹細胞を用いて解析を行ったところ、未分化な神経幹細胞(Pax6陽性細胞)では約8%の細胞が一次繊毛を持つのに対して、分化した細胞(Pax6陰性細胞)ではその割合は15%程度であることを見出した。さらに一次繊毛の形成と機能に必須の役割をもつIFT20の発現を抑制したところ、自己複製を介した持続的なニューロン産生が減少することを見出した。すなわち、神経幹細胞における一次繊毛の形成は自己複製に必要であると考えられた。また我々はWnt5a-RorシグナルがPCP(平面内細胞極性)制御因子Dishevelled2(Dv12)を介して神経幹細胞の自己複製を制御することも明らかにしているが、神経幹細胞におけるIFTの発現を抑制したところ、Wnt5a-RorシグナルによるDvl2のリン酸化(活性化)が抑制された。この結果は神経幹細胞における一次繊毛の形成または機能がWnt5a-Rorシグナルを活性化するために必要であることを示唆している。これらの結果から、神経幹細胞において選択的に一次繊毛が形成されることにより、Wnt5a-Rorシグナルの活性化を介して神経幹細胞の自己複製を制御していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に準じて解析を行うことにより、Wnt5a-Rorシグナルを介した神経幹細胞の自己複製制御におけるPCP制御因子Dv12の関与と一次繊毛の形成に関わるIFT20の関与を明らかにしており、非対称分裂を介した自己複製制御の分子機構を解明する糸口を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究結果を踏まえて、大脳皮質神経幹細胞の非対称分裂を介した自己複製過程におけるPCP制御因子Dvl2および一次繊毛形成に関わるIFT20の機能解析を行う。特に、当初の計画どおりにin vivoにおける機能解析を行うためにin uteroエレクトロポレーション法、スライス培養法、タイムラプスイメージング法を用いて、これら分子の機能解析を行う。これらの解析によって、PCP制御因子と一次繊毛形成の関連を明らかにするとともに神経幹細胞の非対称分裂を介した自己複製制御に果たす役割を明らかにする。
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