研究領域 | 神経細胞の多様性と大脳新皮質の構築 |
研究課題/領域番号 |
23123516
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岡田 誠司 九州大学, 医学研究院, 准教授 (30448435)
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キーワード | 神経幹細胞 / 分化関連遺伝子群 / 次世代シークエンサー |
研究概要 |
近年、様々な中枢神経疾患に対して神経幹細胞移植の有効性が報告され、海外では既にいくつかの臨床治験も開始されている。しかし、そのメカニズムや効果の限界、どのような細胞を補充すべきかなどの詳細は依然不明な点が多い。特に、移植後の神経幹細胞の分子プロファイルを解析する方法が無いため、移植環境に応じてどの程度幹細胞の性質や分化が変化するのかは全く解析されていない。そこで我々は、移植細胞を選択的にセルソーターで回収しギガシークエンサーによるトランスクリプトーム解析法を確立し、発現遺伝子のプロファイル解析を行なう系を確立した。神経幹細胞(マウスE14.5線条体由来neurosphere,P3)をin vitroで7日間分化させた場合、分化前後のトランスクリプトーム解析では共通発現遺伝子の50%以上は少なくとも2倍以上発現量が変化しており、数百から数千の遺伝子がクラスターを形成して同調的に機能していると考えられ、個別の因子を解析するのみでは分化機構の全容を解明することは困難であると予測された。特に、損傷脊髄に移植して7日後に回収した神経幹細胞のトランスクリプトーム解析を行なった結果は、全体的な転写抑制、細胞外刺激に対する反応性、神経分化が著明に抑制されており、in situでの細胞機能解析と共に、移植医療確立のためには神経幹細胞分化機構のより詳細な解明が重要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次世代シークエンサーを用いた神経幹細胞の発現遺伝子解析系が立ち上がり、細胞分化時の発現遺伝子がクラスターを形成し同調的に制御されていることを確認出来た。移植後に生着細胞のみを回収して発現遺伝子解析を行なう系も確立された。当初計画していた遺伝子座同士の近接を解析する段階には至っていないため、今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
現在の問題点としては、神経幹細胞がニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトのtri-lineageに分化してしまうことが挙げられる。そのため、神経幹細胞分化の際に、どの遺伝子がどのタイミングでクラスターを形成して発現制御が行なわれているのかが分かりにくい結果となっている。そこで、E11.5のマウス線条体より細胞を採取し、神経幹細胞をニューロン系のみへdominantに分化させた系での網羅的遺伝子発現解析を現在行なっている。これにより、より純化させた系での神経幹細胞分化時の分化関連遺伝子群の挙動が具体的になると考えている。
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