研究領域 | 神経細胞の多様性と大脳新皮質の構築 |
研究課題/領域番号 |
23123521
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研究機関 | (財団法人)大阪バイオサイエンス研究所 |
研究代表者 |
古泉 博之 (財団法人)大阪バイオサイエンス研究所, 神経細胞生物学部門, 研究員 (10334335)
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キーワード | 神経科学 / 脳神経疾患 / 大脳皮質発生 / 神経回路形成 / 神経突起伸長 / 微小管 / 微小管結合蛋白質 |
研究概要 |
ダブルコルチン様キナーゼDclk1およびDclk2は脳の発生期にそれぞれDcxと協調的に大脳皮質錐体細胞の移動や軸索伸長、海馬錐体細胞の樹状突起形成において機能している。本研究では、神経細胞の形態形成を司る分子、細胞メカニズムを解明するために、微小管骨格制御に関わるDCXドメインおよびプロテインキナーゼ部位をあわせ持つDCLK1/2に注目し、その基質の探索を行った。 まず質量分析を用い、DCLK1の結合タンパク質の網羅的同定を行った。そのうち微小管に関与する蛋白質に注目し、MAP7D1(micrtotubule-associated protein 7 domain containing 1)がin vitroにおいてDCLK1の新規基質であることを見出した。MAP7D1は胎児期の脳に強く発現しており、免疫蛍光染色によりDCLK1が強く発現している皮質板や中間層を走る軸索神経線維において共発現しており、また単離した神経細胞においては神経突起の根元の部分においてDCLK1と共局在していた。大脳皮質神経細胞においてMAP7D1のノックダウンを行うと、DCLK1のノックダウンと同様、神経突起伸長が抑制され、さらにDCXとダブルノックダウンをおこなうとどちらも同様に神経突起伸長の阻害効果の増大が見られた。このことからDCLK1がMAP7D1をリン酸化することにより神経突起伸展に関与することが示唆された。現在DCLK1によるリン酸化が突起伸長に関与するか、さらにこのリン酸化の機能的意義について解析を行っている。 この研究成果により神経細胞の形態形成にかかわるDCLK1のこれまで機能の分かっていなかったプロテインキナーゼ部位も脳の発生に重要な役割を持つことが初めて示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経細胞の形態形成にかかわるDCLK1のこれまで機能の分かっていなかったプロテインキナーゼ部位の新規基質MAP7D1を同定し、その基質が神経突起伸展にかかわることから、キナーゼ部位も脳の発生に重要な役割を持つことを初めて示したという点で評価できる。またDCLK1の結合タンパク質のリストを得ており、さらに詳細な分子機構を考える上での有用な情報を得ているという点で評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
更なるDCLK1/2の基質の同定を目指し、Dclk1/Dclk2ダブル欠損マウスを作製した。今後はこのマウスを用いてDclk1/Dclk2ダブル欠損神経細胞を初代培養し、質量分析用いてDCLK1/2の基質タンパク質の網羅的同定を行う。 さらにDCLK1/2の神経細胞移動、軸索伸長、樹状突起形成それぞれに関わるシグナル伝達を明らかにする。
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