胚発生時には骨格筋の収縮が起こらない限り腱組織が形成されないなど、発生過程より骨格筋と腱は非常に密に関係している。しかし、腱再生過程に近傍の骨格筋がどのような影響を及ぼしているかどうかに関しては殆ど明らかにされていない。骨格筋繊維上に存在する骨格筋幹細胞は骨格筋の損傷時にはその静止期にある幹細胞群が活性化して増殖し始め、損傷部位へと遊走し骨格筋繊維の再構築に寄与するこどが知られているが、近傍の腱組織の損傷時にはその寄与が起こるのかどうかは生体内で追跡することは困難である。本研究は上記の問題点をその接合組織の一つである骨格筋から迫るものであり、3次元構造を有する骨格系組織の総合的理解をする上で必須の研究内容であると考える。骨格筋と腱における再生制御機構の差異を解明し、それぞれの組織幹細胞を調査する為、平成23年度には骨格筋幹細胞から骨格筋へと増殖分化した細胞群を可視化するために骨格筋幹細胞で発現する転写因子Pax7とその後骨格筋へと分化する際に発現する転写因子Myodを指標とした時期特異的蛍光発現マウスの作製にあたった。Pax7の遺伝子座にタモキシフェン誘導型Cr6遺伝子を挿入したPax7CreERマウス、さらにMyod遺伝子座を含むBAC DNA中にCre遺伝子を組み込んだMyodCreマウスとRosa26遺伝子座にCre発現下でRFPが発現するマウスとの組み合わせを観察すると、それぞれの遺伝子発現下でRFPが観察された。このRFP発現により、組織中におけるPax7、Myod発現細胞をセルソーター、ならびに免疫組織化学的手法により同定することが可能となった。
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