研究実績の概要 |
骨格筋と腱における再生制御機構の差異を解明し、それぞれの組織幹細胞を調査することを試みた。まず前年度より骨格筋幹細胞から骨格筋へと増殖分化した細胞群を可視化するために骨格筋幹細胞で発現する転写因子Pax3/7と、その後骨格筋へと分化する際に発現する転写因子MyoDを指標とした時期特異的蛍光発現マウスの作製にあたり、セルソーターならびに免疫組織化学的手法によりそれぞれの発現細胞を同定することが可能となった。 骨格筋幹細胞として単離した細胞集団を用いて、代表的な骨格筋疾患の一つである筋ジストロフィーに対する細胞移植治療の為の源と成り得る事が示唆されている。しかし、成体における骨格筋幹細胞以外ではソースに成り得るかどうか不明であった。そこで、胎児期の骨格筋前駆細胞から成体における骨格筋幹細胞の各段階で発現するPax3遺伝子に組み込んだGFP蛍光発現を指標に、骨格筋幹細胞に成り得る様々な細胞集団の移植をジストロフィン欠損マウスに行った。 その結果、MyoDを発現していない胎生10.5日目における骨格筋前駆細胞(EMP; Embryonic Myogenic Progenitor)では筋ジストロフィー原因遺伝子のジストロフィンの発現回復に寄与しなかったが、胎生16.5日目以降のPax3発現骨格筋幹細胞を含む細胞集団移植によって成体の骨格筋幹細胞と同様にジストロフィン発現回復に寄与する事、さらには移植した細胞集団が移植マウス生体内で新たな骨格筋幹細胞を生み出すことが明らかとなった(Sakai et al., PLoS One)。この細胞集団をFMP(Fetal Myogenic Progenitor)と命名し、その中でもMyoDを発現した系譜を用いた場合により骨格筋再生能が高いことを見出した。
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