研究概要 |
本研究の計画の骨子は以下の通りである。 (1)DNAシチジンデアミネースAID(Cを脱アミノ化してUに変換)とウラシルDNAグライコシレースUNG1(DNA中のUを修復)の発現を相互排他的に誘導・抑制できる酵母株を構築する。 (2)(1)の株をAIDの発現が誘導されUNG1の発現が抑制される条件(AID+/UNG1-)の寒天培地上に散布し、DNA鎖の随所にC→Uの変換を誘導する。 (3)(2)の状態での複製により姉妹染色分体間に微細な配列の差異を導入する。 (4)出芽直後に母細胞と娘細胞をマイクロマニピュレータで分離して、AIDの発現が抑制されてUNG1の発現が誘導される条件(AID-/UNG1+)の培地に移す。 (5)(4)の状態で十分に増殖させた両細胞のゲノム配列を決定する。親細胞のWatson鎖およびCrick鎖(図中それぞれWとC)に由来する娘細胞のゲノム領域は、親細胞の元来の配列(参照配列)に対してそれぞれC-TおよびG-Aのミスマッチを示す。この性質を利用して分配様式を明らかにし、組み換え部位を特定する。 上記の目的を実現するために、hAIDとUNG1をそれぞれMET17プロモータとGAL1プロモータで発現させる酵母株(FY1679-28C,ung1-delta::KanMX,URA3::GAL1pr-Flag-UNG1,LEU2::MET1Zpr-GFP-Flag-hAID)の作成を進めた。作成した株を(1)ガラクトースとメチオニンを含む培地と(2)グルコース培地で培養し、抗Flag抗体でウエスタンブロット解析を行って、(1)と(2)でそれぞれUng1とhAIDが相互排他的に発現することを確認した。 次に、カナバニン抵抗性を指標に、変異率の検討を行った。その結果、変異率が不十分と判断されたため、その向上を目指して、以下の改変を加えた。まず、AIDによる変異率向上に有効であることが報告されているTHO複合体の構成因子を破壊した。次に、hAIDからFlagタグを除いた。これらの改良で変異率の向上が認められた。現在、より詳細な解析を進めている。
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