公募研究
本研究はそれを保持するとメス化を引き起こすB染色体がどのようにしてそのような機能を獲得したか明らかにすることを目的としている。平成23年度はB染色体がどのような機能を持つ可能性があるのかを調べるために、B染色体上に存在する遺伝子の網羅的解析、常染色体に存在するB染色体起源領域の探索、B染色体の活性化の状態について調べた。B染色体は由来となったゲノム領域を反復単位として構成されていると考えていたため、B染色体上に存在する遺伝子を網羅的に解析するために、B染色体を保持する個体と保持しない個体でゲノムを比較することによりその構成単位を明らかにすることを試みた。その結果、B染色体に存在する遺伝子は不完全な状態で部分的に反復して存在することが明らかになった。また、その常染色体上の起源についてFISHとゲノム解析により調べると、異なる染色体の複数の領域が起源となり反復配列を多く含んでいた。次に間期核でのB染色体の動態を3D-FISHにより解析した。その結果、B染色体は核膜付近に凝集して存在しており、ヘテロクロマチン化していることが示された。さらに、B染色体のDNA配列のメチル化を解析したところ、B染色体の配列は高度にメチル化されており、これもヘテロクロマチン化を示していた。これらのことより、B染色体上の遺伝子が発現しメス化を引き起こしている可能性は低いと考えられた。こられの結果より、メス化を引き起こすのはB染色体上の遺伝子ではなく、B染色体に存在する配列が常染色体上の性決定領域を不活性化し、メス化を引き起こすのではないかと考え、平成24年度の研究に発展させる予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
研究計画調書作成当時はB染色体がどのような配列で構成されているか、ごく一部の配列しか明らかにされていなかったが、研究計画をゲノム比較に変え、大規模にゲノムを決定することによって、その構成配列が明らかになった。また、B染色体の動態や起源についても明らかになり、B染色体に存在する配列が常染色体に影響を及ぼしているという説から、さらに研究を進めることが可能となった。そのため、予想以上に進展していると評価した。
平成24年度はB染色体を保持することにより、どのような影響があり、メス化を引き起こすのかを明らかにする予定である。具体的にはB染色体上の反復配列が常染色体上の性決定領域を不活性化していると考えている。研究を遂行するために、始めにB染色体を持たない個体の性決定領域を特定する。すでにB染色体なしの親と子のDNAを得ているので、これを用いて性決定領域を多型マーカーを用いて特定する。また、性決定領域はオスメス間で配列が分化しているので、23年度に決定したオスとメスのゲノム配列を用いて、性決定領域の推定を行い多型マーカーを選択する。性決定領域を決定したならば、その領域のDNAメチル化の状態をB染色体のある個体とない個体で比較する。また、近縁種のゲノム解析から、何故特定の種だけでB染色体の保持によるメス化が引き起こされるかを明らかにする。
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Molecular Biology and Evolution
巻: (in press)
PLoS Genet
巻: 8 ページ: e1002203
巻: 6 ページ: 1769-1776