研究領域 | ゲノムアダプテーションのシステム的理解 |
研究課題/領域番号 |
23125512
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
小保方 潤一 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (50185667)
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キーワード | ゲノム変動 / 転写 / エピゲノム / クロマチン / 進化 |
研究概要 |
本研究の目的は、植物の核ゲノムに挿入されたコード領域配列が、どのようにしてクロマチンの構造変換を自己の近傍に誘導し、周辺の転写領域を変動させるのか、またそのようなクロマチンのエピジェネティックな構造・性質が、その後の遺伝や自然選択にどのような影響を与えるのかを解明することである。本年度の研究では、以下の2点の成果が得られた。 (1)高等植物において遺伝子コード領域の存在は転写型ジーンサイレンシングを抑制する。 これまでの研究から、コード領域のATG開始コドンは近傍ゲノム領域のクロマチン構造や転写開始点の生成に影響を与えることが強く示唆されていた。そこで、ATG開始コドンの破壊系統を作成したところ、当該コード領域のみでは無く、隣接する選択マーカー遺伝子の発現まで抑制され、polIIの結合量が大きく低下した。このことは、植物ゲノムには、コード領域の存在に依存して転写型ジーンサイレンシングを抑制する機構があり、コード領域に依存したプロモータークロマチンの形成と深い関係があると考えられる。 (2)ゲノム上の遺伝子重複領域ではATG開始コドンの保存性が転写状態の持続性に影響を与える。 シロイヌナズナゲノム中の遺伝子重複領域の中から、重複後に開始コドンが消失した領域を探索し、得られた領域について、転写開始点マッピングやChIP-PCRなどによる比較解析を行ったところ、ATG開始コドンを欠損した重複領域では、重複元の領域に比べて転写量が低下する傾向が見いだされた。この結果は、ATG開始コドンの変異による転写領域の消失が、ゲノム上で遺伝子が機能を失うメカニズムの1つであることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究によって、「コード領域の出現・消長が、周辺ゲノム領域の転写状態に強い影響を与えること」を裏付ける知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に、前年より進めている解析をさらに継続し、形質転換植物の系で、コード領域配列がその近傍クロマチンのリモデリング、ジーンサイレンシング、プロモーター領域の新生、転写開始複合体のリクルートなどにどのような影響を与えているのかを解明する。
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