初年度では予定していた植物材料の取得を進め、新たに3か所から採集をおこなった。それらの系統を加え、すでに育成中の個体も用いて次年度以降に染色体の分離を調査するためのF1個体の作出のための交配をおこなった。開花が同時期に見られた個体を用いて、複数の組み合わせで交配をおこなったところ、受粉はするが種子の成熟が進まないものや順逆交配ができないものなどがみられたが、6種類の亜種内、亜種間の交配によるF1個体が得られた。 得られたF1種子を播種し、F1個体を一つの交配組み合わせごとに4個体以上を育成し、次年度の交配の材料として準備中である。年度末からいくつかの個体は開花がみられ、親系統や別の系統の開花に合わせ交配が可能な状態になっている。 また、染色体の分離を調査するための遺伝子マーカーの作成をおこなった。それぞれの個体の動原体構成の違いにかかわらず8本の染色体の動原体近傍領域に交配に用いた個体を識別できる遺伝的変異を特定した。一部の染色体に関してはさらなる調査が必要であるがほぼすべての染色体を区別できる状態になり、次年度の調査が可能な状態とした。 また本研究課題の対象である動原体領域のダイナミックな変化に関係する可能性がある転移因子の調査をおこない、動原体領域に特異的に挿入することを明らかにした。この現象がどれだけ一般的なのか、動原体の進化にかかわる可能性があるのかについて今後解析を進めていく予定である。
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