研究領域 | 食欲と脂肪蓄積の制御と破綻の分子基盤の解明 |
研究課題/領域番号 |
23126508
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
菅波 孝洋 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (50343752)
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キーワード | NASH(非アルコール性脂肪性肝炎) / マクロファージ / 慢性炎症 / 異所性脂肪 / 脂肪組織 / アディポサイトカイン / 肝細胞癌 / 遊離脂肪酸 |
研究概要 |
1.MC4R欠損マウスにおける肝病変の経時変化と異所性脂肪蓄積に関する検討: メラノコルチン4型受容体(MC4R)欠損マウスに高脂肪食を負荷し、経時的に観察した。MC4R欠損マウスは、既に知られている肥満や脂肪肝に加えて、負荷後20週までにbalooningやpericellular fibrosisなどNASHに特徴的な肝組織像を呈し、1年後には、ほぼ全個体において多発性肝腫瘍(高分化型肝細胞癌)を発症した。以上より、MC4R欠損マウスは、肥満を背景にして、脂肪肝、NASH、肝細胞癌を経時的に発症する新しいモデル動物と考えられた。MC4R欠損マウスは、野生型マウスと比較して、脂肪組織重量の増加が抑制され、肝臓への脂肪蓄積が増加していた。 2.MC4R欠損マウスにおける脂肪組織炎症に関する検討: MC4R欠損マウスと野生型マウスの脂肪組織重量がほぼ等しい高脂肪食負荷8週後において、脂肪組織を解析した。MC4R欠損マウスでは、著しいマクロファージの浸潤とTNF-αなど炎症性サイトカインの発現上昇、間質の線維化が認められた。また、MC4R欠損マウスは、野生型マウスと比較して血中遊離脂肪酸濃度の有意な上昇を示した。以上より、MC4R欠損マウスにおける著しい脂肪組織炎症が脂肪組織の中性脂肪蓄積能の低下をもたらし、肝異所性脂肪の蓄積に繋がる可能性が示唆された。 3.MC4R欠損マウスの肝病変進展におけるマクロファージの意義に関する検討: MC4R欠損マウスでは、脂肪組織と同様に、肝臓のマクロファージ浸潤が増加しており、脂肪組織と同様のcrown-like structureを認めた。これに対して、単純性脂肪肝に止まる野生型マウスでは同様の所見は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MC4R欠損マウスに高脂肪食を負荷することにより新しいNASHモデル動物を確立し、経時変化を詳細に観察した。本モデルにおいて肝異所性脂肪蓄積が亢進することを確認し、肝および脂肪組織のマクロファージの関与が示唆された。中枢神経系を介する調節機構に関しても、MC4R拮抗薬の投与など順調に予備検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き、MC4R欠損マウスを用いて肝異所性脂肪蓄積の分子機構を検討する。脂肪組織と月刊蔵におけるマクロファージの意義を検討するために、既に、マクロファージ機能に異常を有するマウス(CCR2欠損マウス、TLR4欠損マウス)とMC4R欠損マウスとの交配や骨髄移植を準備しており、来年度に解析する予定である。また、MC4R拮抗薬の脳室内投与に関する基礎検討も概ね終了しており、来年度、肝臓や脂肪組織の炎症性変化や脂質代謝に及ぼす影響を検討する予定である。
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