1.NASH発症における肝臓マクロファージの意義に関する検討: 我々が確立した新しいNASHモデル・MC4R-KOマウスの肝臓では、肥満の脂肪組織におけるcrown-like structure(CLS)に類似したマクロファージが肝細胞を取り囲む組織像が多数認められた(hepatic CLS: hCLS)。興味深いことに、hCLS数は線維化面積と正の相関を示すこと、hCLSの近傍にはαSMA陽性の筋線維芽細胞が認められ、コラーゲンが蓄積することが明らかになった。一方、野生型マウスに対する高脂肪食負荷や通常食飼育下のMC4R-KOマウスでは、hCLSを認めなかった。以上より、NASHの発症・進展に伴って肝臓におけるマクロファージの分布が変化することが明らかになり、hCLSがNASHにおける炎症慢性化や線維化発症に関与する可能性が示唆された。 2.NASH発症におけるレプチンの意義に関する検討: 四塩化炭素誘導性肝障害モデルなどを用いて、肝線維化におけるレプチンの意義が報告されている。MC4R-KOマウスは著しい高レプチン血症を呈するため、遺伝的にレプチンを欠損するob/obマウスとMC4R-KOマウスの比較を行った。高脂肪食負荷により、ob/obマウスにおいて体重や脂肪組織重量のより顕著な増加を認めたが、肝重量はMC4R-KOマウスでより増加した。ob/obマウスでは肝線維化は軽度に止まっており、MC4R-KOマウスで認められる高レプチン血症が肝線維化に関与する可能性が示唆された。
|