研究領域 | 食欲と脂肪蓄積の制御と破綻の分子基盤の解明 |
研究課題/領域番号 |
23126509
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
井上 啓 金沢大学, フロンティアサイエンス機構, 特任准教授 (50397832)
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キーワード | 肝臓脂肪蓄積 / 中枢神経 / インスリン |
研究概要 |
肝臓脂肪蓄積の制御とその破綻について、中枢神経・自律神経作用が果たす役割について検討した。中枢神経・自律神経作用の活性化に、脳室内インスリン投与を用い、肝臓脂肪蓄積制御に対する作用を解析した。具体的には、中枢神経作用に伴う膵β細胞作用を排除するための膵クランプ法とともに、脳室内インスリン投与を行い、肝臓中性脂肪含量、肝臓脂質合成系・燃焼系酵素遺伝子発現を行った。野生型マウスおよびレプチン受容体欠損マウスに対して、脳室内インスリン投与を行ったが、肝脂質代謝関連遺伝子に明らかな変化を見出さなかった。特に、レプチン受容体欠損マウスにおいては、脳室内インスリン投与に伴う肝糖代謝変化においても明らかな変化を認めなかった。このようなレプチン受容体欠損マウスにおける中枢神経性肝糖代謝制御の障害は、中枢神経作用の肝臓エフェクターであるSTAT3の活性化の障害に起因することを見出し、そのメカニズムが肝臓小胞体ストレスによる事を明らかにした。この肝臓小胞体ストレスに伴う中枢神経性肝糖代謝制御障害についての知見をDiabetes誌に発表した。 さらに、肝臓脂肪蓄積の制御とその破綻におけるクッパー細胞の役割について検討した。 中枢神経インスリン投与においては、クッパー細胞除去により、中枢神経性肝臓糖代謝制御が消失することを確認した。また、迷走神経切除において、中枢神経性の肝臓エフェクターであるSTAT3の活性が消失することも確認した。このことは、中枢神経性の肝糖代謝にクッパー細胞・迷走神経が重要な役割を果たしていることを示唆している。しかし、当該条件においても、明らかな肝臓脂質代謝異常は起こらなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画は、ほぼ計画通りに進められている。中枢神経性の肝脂質代謝制御が必ずしも明らかでないことから、研究の条件検討の見直しが必要となる可能性があるが、既に、より高感度の解析法による解析を進めており、特に研究計画の進行の妨げにはならないものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
肝臓脂肪蓄積の制御とその破綻についての、中枢神経・自律神経作用が果たす役割の解明に対して、今後は、おもに迷走神経切除モデルの解析と大小内臓神経切除モデルの解析の自律神経遮断モデルを用いた検討を行う。また、中枢神経性の肝脂質代謝解析のための高感度肝脂質代謝モニター法の導入により、より詳細な検討を行う。同時に、肝脂質代謝異常へのAchの役割の解析を、当初の研究計画に基づき、主に薬剤投与を中心とした手法により、進めていく。
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