研究実績の概要 |
アドレノメデュリン(以下AM)は強力な降圧活性等、循環系に多彩な作用を有し、循環調節並びに循環器疾患の病態に深く関与している。最近の研究で脂肪組織においてもAMが高度に発現している事が示されている。我々も脂肪細胞がAMを著明に分泌している事を示し、AMが脂肪細胞分化を促進すること、lipolysis作用を有すること、ブドウ糖取り込み作用を有することなどを示した。しかしながら生体内におけるAMの脂肪細胞における意義は明らかでない事から本研究ではAMの脂肪組織特異的なKOマウスの樹立を試みた。AM遺伝子の第4 exonのAMをコードする領域の上流と下流にloxP配列を挿入し、第2,3exon に存在するもう1つの生理活性ペプチドPAMPはそのままにし、AM遺伝子のみを欠損させるコンディショナルKO マウスである。AM floxマウスをまず樹立した。次に脂肪細胞に特異的に発現するaP2をプロモーターに用いて、Creリコンビナーゼ過剰発現マウスを作製し、floxマウスと交配させて、最終的に脂肪細胞特異的AM欠損マウスを樹立した。このマウスの脂肪細胞ではPAMP遺伝子発現は野生型とかわらず、AM遺伝子発現のみが約20%に低下した。表現系としてはAM KOマウスで血圧が高い傾向が認められた。体型は野生型に比し、AM KOマウスで軽度やせ型であり、内臓脂肪も精巣周囲、腸間膜等、野生型に比べて少ない傾向を認めた。また開腹すると体重の増加は野生型に比べて低下傾向を認めたが、摂食量に差はなかった。今後この遺伝子改変マウスを用いてAMの糖代謝・脂質代謝における意義を解明していく予定である。脂肪由来のAMの血管・リンパ管新生作用なども合わせて検討し、脂肪組織でおこる慢性炎症細胞浸潤のドレナージにおけるAMの新しい意義も検討する予定である。
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