レプチン補充療法により脂肪萎縮症で認められる糖脂質代謝が著明に改善することを明らかにしてきたが、そのメカニズムは不明な点が多い。一方、AMPKは糖脂質代謝制御における重要な鍵分子であり、近年、レプチンが骨格筋でAMPK活性化作用を示すことが報告されている。本研究では、脂肪萎縮性糖尿病におけるAMPKの意義を明らかにするとともに、今回確認されたレプチンによる肝AMPK活性化作用のメカニズムを検討した。レプチンは骨格筋AMPK活性化作用以外にも、肝AMPK活性化作用を有することが明らかになった。C57BL/6マウスにおいて迷走神経肝臓枝切断手術はレプチンによる肝AMPK活性化作用に影響を及ぼさなかったが、guanethidine持続投与による交感神経化学的除神経を行うとその作用は完全に抑制された。さらに、レプチンによる肝AMPK活性化作用はα1プロッカーの共投与により完全に抑制された。βプロッカーの共投与による抑制は認められなかった。また、α1アゴニスト投与時にも肝AMPK活性化は認められた。よって、レプチンは交感神経系α作用を介して肝AMPK活性化作用を示すことが明らかとなった。また初代培養ラット肝細胞に対するレプチン投与ではAMPK活性の上昇は認められなかった。以上より、レプチンは肝臓に直接作用するのではなく、中枢神経およびα交感神経系を介して肝AMPKを活性化するものと考えられた。また、脂肪萎縮性糖尿病では肝AMPK活性が低下しており、それが糖脂質代謝異常に関与していると考えられた。本研究により、脂肪萎縮性糖尿病の病態の成因およびレプチンの糖脂質代謝亢進作用における肝AMPK情報伝達系の意義が初めて示され、その治療標的としての可能性が明らかになった。
|