【目的】 本研究では、摂食リズムの乱れによるインスリン抵抗性発症と中枢性代謝調節機構との関連について調べた。 【方法】 マウスの摂食時間を、暗期のみ(ZT12-24、Control群)、暗期前半4時間のみ(ZT12-16、Morning群)、暗期後半4時間のみ(ZT20-24、Evening群)に分けて飼育し、8週間後に実験を行った。 【成果】 Morning群はControl群と比べて、摂餌量と体重増加が低かったのに対して、Evening群はControl群と比べて、1日当たりの摂餌量は低いにも関わらず体重に差はなく、全身のインスリン抵抗性を示した。また、他の2群と異なりEvening群において、骨 格筋における中性脂肪含量およびFASやperilipinなど脂質代謝関連遺伝子の発現が有意に高かった。Evening群の肝臓における中性脂肪含量に有意な差は見られなかった。一方、Evening群の視床下部において、AgRP発現リズムが摂食リズム形成後早期に大きな乱れを示し、8週間後にはPOMC発現の低下を示した。AgRPを脳室内に一過性に投与すると、骨格筋に投射する交感神経の活性および骨格筋におけるAMP-kinaseのリン酸化が低下した。また、AgRPをマウス脳室内に7日間連続で投与すると、摂食量をコントロール群と同量に調整したにもかかわらず、骨格筋における中性脂肪含量および脂質代謝関連遺伝子の発現が高値を示した。 【結論】 以上の結果より、摂食リズムの乱れによるインスリン抵抗性発症の原因の一つに、視床下部における神経ペプチドの発現リズムへの影響と、中枢メラノコルチン系による骨格筋への異所性の脂肪蓄積が可能性として考えられる。
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