研究領域 | 食欲と脂肪蓄積の制御と破綻の分子基盤の解明 |
研究課題/領域番号 |
23126522
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
伊達 紫 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 教授 (70381100)
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キーワード | 腸間膜脂肪組織 / マクロファージ / 生理活性ペプチド / 肥満 |
研究概要 |
高脂肪食給餌により、通常、大半のラットやマウスは肥満を呈するが、中に体重増加を示さない高脂肪食耐性動物が存在する。本研究では、高脂肪食摂取ラットの中で、普通食ラットの体重を下回り、かつ腸間膜脂肪組織において、特異的分子(水・電解質代謝調節ペプチドおよびその受容体)を高発現している個体を検出し、エネルギー代謝特性を検討した。同高脂肪食耐性ラットは、高脂肪食肥満ラットに比べ、耐糖能がよく、また、インスリン感受性も極めてよかった。エネルギー消費に関しては、熱産生、酸素消費、行動量について検討したが、肥満ラットとの間に有意な差を認めなかった。水・電解質代謝調節ペプチドおよびその受容体を高発現する高脂肪食耐性ラットは、高脂肪食給餌ラットの数%でしか検出できなかったため、個体数を確保し両特異的発現分子と抗肥満との関連を検討するために、ダブルトランスジェニックラットを作製し、代謝特性についての解析を進めている。高脂肪食耐性ラットにおける特異的発現分子は、マクロファージで産生されていたことから、同特異的分子を発現するマクロファージ細胞株をスクリーニングし、ラット腸間膜脂肪初代培養細胞との共培養系を確立した。このマクロファージ細胞と腸間膜脂肪細胞を共培養すると、脂肪滴の蓄積が明らかに抑制され、脂肪細胞での脂肪酸合成酵素や脂肪滴形成タンパクの発現が有意に低下していた。両分子をsiRNAにてノックダウンしたマクロファージを用いて、共培養を行った場合、脂肪滴の蓄積抑制は部分的に解除され、脂肪酸合成酵素や脂肪滴形成タンパクの低下も増加に転じた。これらの結果は、間接共培養系あるいはマクロファージのコンディションメディウムにおいても認められたことから、マクロファージからの液性因子が脂肪滴の合成や蓄積に重要な役割を果たすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究目的に則し、高脂肪食耐性ラットの代謝特性を明らかにできた。さらに詳細な代謝特性を解析するためにダブルトランスジェニックラットの作出も行っており、高脂肪食に耐性を示すことも確認できている。また、in vitroの研究では、高脂肪食耐性ラットでの特異的発現分子が脂肪滴の合成や蓄積に機能していることも明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度に予定している高脂肪食に耐性を示すダブルトランスジェニックの系統化も順調に進んでおり、予定どおりに研究を推進することが可能な状況である。同トランスジェニックラットの腸間膜マクロファージがM2にシフトしているといった特性も予備的実験から見出しており、高発現分子のカスケードと慢性炎症といった観点からも、肥満制御のメカニズムにアプローチしていけるものと考えている。
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