研究領域 | 食欲と脂肪蓄積の制御と破綻の分子基盤の解明 |
研究課題/領域番号 |
23126527
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
土田 邦博 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所, 教授 (30281091)
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キーワード | 異所性脂肪 / 骨格筋 / 幹細胞 / 細胞分化 / TGF-βファミリー / 脂肪肝 / プロテオミクス |
研究概要 |
異所性脂肪の蓄積は、生体の恒常性の破綻をきたし、内分泌・代謝疾患や動脈硬化を引き起こす。また、線維化は肝臓、肺、骨格筋等各種臓器に生じる病態である。筋内脂肪沈着モデルを起点として、脂肪細胞に分化する間葉系幹細胞の同定に成功し、線維化と脂肪産生を担う細胞が同一の起源であることを突き止めた。具体的には、血小板由来増殖因子受容体αを表面に持つ細胞が筋内の間葉系幹細胞としての作用を持ち、脂肪細胞や繊維芽細胞へ分化することを解析した。また、同定細胞は培養条件によっては、間葉系系譜の骨芽細胞や軟骨細胞にも分化しうるが、筋衛星細胞とは異なり、筋分化は示さないことを解明した。近年、脂肪細胞の慢性炎症が脂肪細胞の動態に影響を及ぼし、脂肪蓄積の関与する事が明らかとなっている。無機性ナノ粒子を用いて、抗炎症剤を効率よく疾患部位に到達させるドラッグデリバリー系の開発研究を行った。 マイオスタチンは、TGF-βファミリーに属し、骨格筋から分泌されるマイオカインで生体内の最も重要な筋量調節因子である。マイオスタチン阻害による個体の表現型の解析を推進し、筋量の増大、脂肪細胞の肥大化の防止、高脂肪食負荷による脂肪肝形成の阻害、インスリン感受性の増加などが生じる事を示している。さらに、骨格筋や血清を用いたプロテオーム解析のために、様々な条件検討を行い、アクチン等の含量の多いタンパク質を除くと共に希少タンパクを濃縮する手法を確立した。予備的なプロテオミクス解析から、マイオスタチン欠損筋で糖代謝系の酵素の量的変化および翻訳後修飾を中心とした質的変化を捉える事が可能となった。組織間クロストークの解析のために、並体結合実験が可能な環境を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
異所性脂肪は第3の脂肪とも言われ、その動態変化は、糖尿病、動脈硬化等に関与するため、その解析は重要視されている。研究代表者らの脂肪幹細胞の同定とその解析は、独創的であり、多分化能の解析等研究が大いに進展した。マイオスタチン阻害による脂肪細胞の動態解析についても、質量分析計を用いた解析、並体結合実験の導入等、研究は当初の計画以上に進展したと判断出来る。
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今後の研究の推進方策 |
皮下脂肪、内臓脂肪に加えて、体内の様々な場所に出現する異所性脂肪の動態解析の推進は、波及効果が大きい。マイオスタチン、骨形成因子(BMP)、アクチビン等のTGF-βファミリーは、脂肪細胞の肥大化や慢性炎症に関わる事が解析されつつある。引き続き、マイオスタチンの脂肪細胞における作用の解明を行うと共に、骨形成因子の脂肪細胞に対する作用も詳細に検討する予定である。
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