研究概要 |
摂食には、視床下部によって制御される生命機能に必要な恒常性を維持するための摂食(homeostatic eating)と、飲食物のおいしさ(味覚や嗅覚、視覚などによる感覚情報)に起因し、前頭葉の神経のネットワーク(人間の精神や思考、情緒を制御する)の影響を受ける嗜好性に基づく摂食(hedonic eating,palatability-induced eating)に分類する事が出来る。摂食障害は恒常性を維持するための摂食の病気ではなく、「人からどう思われるのか」という意識に関連し、ストレスを背景とした嗜好性に基づく摂食の異常に基づく病気である。ストレスは、CRHシステムを活性化すると共に、視床下部・下垂体・副腎軸(HPA軸)を活性化し、下垂体からのACTH分泌を介して、副腎皮質からグルココルチコイド分泌を誘導して、ネガティブフィードバックを引き起こす。HPA軸の異常と摂食障害との関連を示唆する臨床データが蓄積してきている。申請者らが、世界に先駆けて、作成・解析してきたMC2R KOマウス(Chida et al.PNAS 2007)では、グルココルチコイドが産生されず、ネガティブフィードバックが起こらないために、視床下部においてCRH発現が増強され、下垂体におけるPOMC発現が増強され、血中ACTHレベルが亢進し、高齢で痩せを呈する。本研究では、摂食障害モデルとしてのMC2R KOマウスの有用性を確立し、HPA軸の異常と内在性オピオイドの制御異常による摂食障害の病態解明と治療法の開発を目的として研究を推進している。本年度は、実施計画どおりにオペラント・レバー押し試験系を導入し、MC2R KOマウスにおいて高脂肪食2対する嗜好性が亢進している事を見出した。
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